2020.9.28
, EurekAlert より:
妊娠中の母親が良い精神状態で過ごすと、新生児のテロメアがより長くなる傾向が明らかに。テロメアが長くなると、細胞が老化しにくくなることが示唆されているため、赤ちゃんの将来的な健康に恩恵をもたらす可能性がある。独シャリテ・ベルリン医科大学の研究。
子どもの発達には、母親の妊娠に関連するさまざまな要因が影響を与える可能性がある。これまで、研究者らは主にストレス、体重過多、栄養不良による悪影響に焦点を当てていた。これらが、たとえば胎盤の機能、早産、子供の健康にどのように影響するかを調べていた。
細胞レベルでは、さまざまな妊娠関連の要因が「テロメア」に直接影響を与える可能性がある。テロメアとは、細胞の染色体の末端にある構造であり、細胞分裂の際に染色体の末端を保護する。テロメアの長さは、細胞の老化の分子生物学的な指標であり、平均余命とさまざまな加齢性疾患に関連している。母親のストレスによる影響は広く研究されてきたが、保護的な因子と子どもの発達へのプラスの影響に関するデータはまだ限られている。
シャリテのエントリンガー教授が率いる研究グループは、妊娠中のストレスに対処する母親の能力(心理的回復力)がテロメアの長さに関係していることを示すことに成功した。妊娠中の母親の気持ちが前向きであるほど、子供のテロメアは長くなる。「前向きな母親の心理的特徴は生物学的に埋め込まれており、胎児を保護する効果があります」と、エントリンガー教授。
先行研究で、研究者らは妊娠中の母親のストレスが子孫のテロメアの長さに影響する方法を調べている。今回、エントリンガー教授らの研究チームは、ノーベル賞受賞者であり、カリフォルニア大学名誉教授のブラックバーン博士の研究チームとの共同研究を行い、650組の母子を対象にした大規模研究を行った。テロメアの長さは、臍帯血の細胞を使用して、出生時に測定した。妊婦がストレスに直面した時の前向きな気持ちは、「回復力指数」を使用して算出され、その際には、妊婦の精神的幸福と社会的サポートも考慮に入れた。
エントリンガー教授は、胎児の生涯にわたる健康状態がどう発達していくのかには、妊娠中の母親の精神的健康が深く関わっているため、妊婦に対する心理社会的支援策の改善が重要性だ、などとしていている。
出典は『米国精神医学雑誌』。 (論文要旨)
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