2020.9.10
, EurekAlert より:
愛情ホルモンとして知られるオキシトシンは、膨満感・不快感・吐き気・下痢といったストレスによる胃腸障害の軽減に重要な役割を果たすことが示された。米ペンシルバニア州立大学の動物実験から。
ストレスは胃腸機能を乱し、胃内容排出時間(胃に入った食物が排出されるまでの時間)を遅らせる。胃内容排出時間の遅れは、膨満感・不快感・吐き気につながり、大腸の通過を加速させて下痢を引き起こす。
愛情ホルモンとも呼ばれ、抗ストレスホルモンでもあるオキシトシンは脳の視床下部から放出され、ストレスの影響を中和する働きをする。これまで長い間、オキシトシンの作用は血液への放出により生じ、胃腸の機能を調節する脳内の神経にわずかな影響しか与えないものと考えられていた。
この研究では、視床下部から放出されたオキシトシンが作用するニューロンと神経回路を操作する新しい方法を用い、ストレスに対する胃内容排出の反応への影響を測定した。すると従来の仮説に反し、これらのオキシトシン回路がストレスに対する胃の反応において主要な役割を果たすことが示された。
これらのオキシトシン回路の活性化は、胃の筋肉収縮(運動性)を増加させることにより、ストレス反応で起こる胃排出遅延を覆した。一方で、オキシトシン回路の抑制はストレスへの適応を防止した。
今回の研究では、視床下部のオキシトシンを受け取る回路の選択的操作と、ストレスに反応した胃内容排出と運動性を同時に測定できる最先端技術を採用した。
様々なタイプのストレスを与えたマウスを用いた実験の結果、オキシトシン神経回路がストレス負荷に対する胃の反応に大きな役割を果たすことが示された。実際、オキシトシン回路の活性化は、ストレスに対する急性または慢性反応の後に観察された胃排出遅延を覆し、それによって胃緊張と運動性の両方を向上させました。反対に、これらの神経回路を抑制すると、ストレスへの適応が妨げられ、胃排出が遅延、胃緊張は低下した。
これらの結果から、オキシトシンがストレス反応に関与する神経経路に直接影響し、ストレッサーに対する胃の反応に主要な役割を果たすことが示された。
ストレスに対する胃の反応をより効果的に治療するためのターゲットを特定するためにはまず、通常ストレスが胃の機能にどのように影響するかを理解することが重要だ。この研究は、ストレス時にこれらの神経や神経回路を制御する際にオキシトシンが果たす役割についての新しい情報を提供し、薬剤開発の新しいターゲットを特定することになるかもしれない。
出典は『生理学雑誌』。 (論文要旨)
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