2020.9.9
, EurekAlert より:
腸球菌(Enterococci、腸に存在する一般的な共生細菌)には、臨床的に重要と思われる方法でさまざまながん免疫治療の効果に影響を与えるバクテリオファージが存在することが、仏グスタフルッシーがん研究所のマウスを用いた研究により明らかにされた。
この知見は、腸内のバクテリオファージに対する微生物特異的なT細胞反応が、腫瘍関連抗原と交差反応することで 抗癌免疫応答に関与している可能性を示しているという。
このことは、がんの分野における微生物の治療上の可能性を強く示唆している。
複数の最近の研究で、腸内微生物叢が、がん免疫セットポイント(抗がん免疫を促進または抑制する因子間の平衡のことを示す)への影響に何らかの役割を果たしていることが示された。
そのため、腸内微生物が、広く使用されている化学療法やPD-1阻害免疫療法などのがん治療の臨床転帰において重要なのではないかと考えられている。
腸内微生物は、腫瘍関連抗原と交差反応するメモリーT細胞を誘導すると推測されているが、微生物特異的リンパ球が抗腫瘍免疫応答に寄与する機構は依然として不明である。
オーレリー・フルッキガーら研究チームは、腸内微生物である腸球菌を餌食にするバクテリオファージが、がん治療に対する全身免疫応答を改善すると思われる免疫応答を刺激することを明らかにした。がん治療後、マウスにバクテリオファージを含む腸球菌を投与すると、T細胞応答が促進されたという。
チームはさらに、がん患者におけるバクテリオファージの存在がPD-1免疫療法後の生存の改善に関連していたことを指摘している。
出典は『サイエンス』。 (論文要旨)
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