2020.9.7
, EurekAlert より: 
「ケトン食(超低炭水化物・高脂肪食)」は短期的には減量に有効だが持続性に欠けるほか、動脈硬化や死亡リスクが高まるなどの傾向がみられるようだ。「間欠的断食(プチ断食)」について示されている潜在的効果は大部分が動物実験によるものであるほか、リスクもあるため、いずれの食事法も現段階では推奨できないという。米エモリー大学などによるレビュー。
研究の責任著者であるナショナル・ジューイッシュ・ヘルスのフリーマン医師は、ケトン食や間欠的断食などの食事法について、メディアには有象無象の情報が溢れているとし「植物ベースの食事や地中海式食事など、健康の専門家が推奨する食事は、安全性と有効性について広く研究されており、心血管の健康を改善するために疑う余地なく実証されています」と話している。
<ケトン食について> ケトン食は極度な低炭水化物の食事法であり、体をケトーシスに移行させる。ケトーシスとは、グルコースの利用が減少し、代わりに主に脂肪がエネルギー源となる代謝状態。ケトン食に関する研究は限られているが、その中で、初期には体重を減らすことが示されているものの、12か月経過後のデータでは持続可能ではない傾向が示されている。また、体重減少がケトーシスによって引き起こされたのか、単にカロリー制限によるものなのかも不明だ。
研究者たちはまた、ケトン食を実践している人が摂取する脂肪の種類と量についても懸念を抱いている。これまでの研究では、被験者が摂取する脂肪や食品の種類を厳密に管理していたのだが、実生活でケトン食を実践する人の多くは、不健康な飽和脂肪を大量に摂取している。これらの脂肪は、心臓病や血中脂肪レベルの上昇と関連している。 さらには、ケトン食を長期間続けると動脈硬化の可能性があるというエビデンスがあるほか、死亡リスクが高くなるとする研究例がいくつも存在する。
しかしながら、ケトン食は糖尿病の潜在的な治療法として有望であり、ケトン食を摂取したマウスでは、血糖値の改善ならびに空腹時血糖値やインスリンレベルの低下が示されている。ケトン食が臨床的に推奨されるようになるには、今後これらの利点を確認するとともにリスクを評価するための、さらなる研究が必要といえるだろう。
<間欠的断食について> 研究者は断続的な断食の潜在的な健康上の利点についても楽観的にみてはいるものの、思わぬ危険性について心配しているという。「間欠的断食」と一口にいっても、その内容はさまざまだ。たとえば、丸1日食事を抜くもの、また、食事を1日のうちの特定の時間帯に限るものなどがある。また、断食によって引き起こされる空腹によって、多くの人が食事の時間に食べ過ぎてしまったり、心血管の健康に悪影響を与えるような不健康な食べ物を選択したりすることが懸念されている。
間欠的断食の潜在的な利点に関する現在のエビデンスの大部分は動物実験から示されたもので、その内容としては長命、体重減少、血圧の低下、耐糖能の改善、脂質レベルの制御がある。
「間欠的断食における、さらなる研究の必要な潜在的リスクには、飢餓の影響とそれが臓器機能にどのように影響するかが含まれます」とフリーマン医師は述べている。「糖尿病患者が間欠的断食を試みる前に医師と話す際には、欠食に伴う疾患と低血糖のリスクを制御する方法について話し合うことが特に重要です」。
<まとめ> ケトン食・間欠的断食いずれの食事療法に好ましい効果については少しばかりのエビデンスはあるものの、大規模な長期研究がその影響をより明確にするまでは、何らかの治療または予防には推奨できないとしている。
代わりに専門家は、地中海式食、自然食品を用いた植物ベースの食事、DASH食(米国立衛生研究所による 高血圧対策の食事法)などといった、心血管の問題を予防または回復させることが広く研究され、科学的に証明されている食事を推奨している。これらはすべて、果物、野菜、豆類、ナッツ類、全粒穀物などを基盤とするという共通点がある。
出典は『米国医学雑誌』。 (論文要旨)
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