2020.9.3
, EurekAlert より:
母乳は乳児の免疫力を強化し、良好な腸内細菌叢の形成を手助けをすることは知られているが、不明であったその分子メカニズムがついに発見された。母乳に含まれる「アラーミン」と呼ばれるたんぱく質が関与しているという。独ボン大学などの研究。
アラーミンは危険信号分子とも呼ばれ、細菌感染や傷害などの危険を速やかに伝達し、免疫系を活性化する起炎因子の総称だ。
「アラーミンは母乳に含まれる『金』といえます。これらのたんぱく質は、敗血症や腸の炎症につながる危険な腸内コロニー形成障害を予防します」とハノーバー医科大学のヴィーマン教授博士は述べている。
生後の腸の免疫システム、つまり腸内細菌叢と腸粘膜は、環境内の細菌との相互作用を通じて成熟する。そして、生涯続く最適な細菌の多様性を生み出し、多くの病気に対する保護を提供する。「アラーミンはこの適合プロセスを制御します」と、ヴィーマン教授は説明している。彼女は、これらのペプチドとたんぱく質はいずれも母乳に由来し、子供の腸管でも産生することを明らかにしている。帝王切開により生まれた乳児は、経膣分娩で生まれた乳児よりもアラーミンが少ないため、分娩法がこれに関与する。さらに、早産児は正期産児よりもアラーミンの産生能力が低い。したがって、そのような人は、慢性炎症性疾患を患う傾向がより強い。
マウスを用いた実験で、アラーミンの単回投与により、コロニー形成不良および関連する疾患に対する保護が得られたことから、ヴィーマン教授は次のように話している。
「これらのたんぱく質の補給は、十分なアラーミンを産生できなかったり、母乳で十分に得られない新生児の発達をサポートする可能性があります。また、慢性的な腸の炎症や肥満などの腸のコロニー形成障害に関連する一連の長期的な状態を防ぐことができます」。
出典は『胃腸病学』。 (論文要旨)
|