2020.9.3
, EurekAlert より:
BMI30を超える肥満の高齢者が超低炭水化物食を8週間続けたところ、体組成や代謝の健康の改善が認められたというアラバマ大学バーミンガム校からの研究報告。
肥満の高齢者は、2型糖尿病や心血管疾患などの心代謝性疾患発症のリスクが特に高い。総体脂肪量だけでなく、腹腔内や骨格筋など特定の部位への脂肪蓄積がこれらの疾患発症リスクの上昇に寄与している。
エイミー・ゴス助教授らの研究チームは、肥満の高齢者(60-75歳の男女34名、BMI30-40)による8週間に及ぶ超低炭水化物・高脂肪食の摂取が、エネルギー制限なく、脂肪蓄積量を減少させつつ除脂肪体重の維持し、その結果インスリン感受性や血中脂質といった心代謝性疾患に関連する因子の改善に寄与する可能性を検討した。
「8週間の介入後、体重を維持する量の食事を推奨していたにもかかわらず、超低炭水化物食を食べていた群は対照群と比較してより体重と体脂肪の減少が大きかった」とゴス博士は話す。
超低炭水化物食では、卵が重要な役割を果たした。ゴス博士らのチームはこの群に対し、1日に少なくとも3個以上の卵を食べるよう伝えた。
「我々の介入には卵が含まれていたが、この研究の成果が卵の摂取によるものだと結論づけることはできない。ただし、今回の結果から、全卵は高齢者における健康的な食事の一部として血中コレステロールへの悪影響なく取り入れることができるといえるようだ。」とゴス博士は述べる。
2つの群の体脂肪の変化の違いは、主に腹腔内脂肪と骨格筋内脂肪の減少によるものだったという。
「今回の研究では、心血管疾患リスク低減につながる血中脂質の改善が認められた。さらに、超低炭水化物食群では、2型糖尿病のリスク低下につながるインスリン感受性の改善もみられた。8週間の超低炭水化物食により、体組成、体脂肪の分布、さらに代謝の健康の改善が認められた。」
■超低炭水化物食の糖尿病への影響 ゴス博士によると、超低炭水化物食は2型糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪性肝疾患など様々な症状の治療の選択肢になるという。
「この研究は過去の研究結果からの示唆を進展させ、肥満の70代の高齢者にとって超低炭水化物食が安全で、治療の選択肢の1つになりうることを示している。」とゴス博士は言う。「これは、高齢者が超低炭水化物食による減量中に骨格筋量を維持しながら「代謝的に有害な」体脂肪を減らすことを示した初めての研究である。」
より若い集団での超低炭水化物食の有効性については多くのエビデンスがあるが、この研究は、特に他の疾患のリスクが高く、年齢に伴う機能低下を防ぐために骨格筋を維持しながら健康状態を改善する治療法が必要な集団である、65歳以上の高齢者における肥満関連因子の改善にこの食事療法が効果を示すかを検討したはじめの研究の1つである、とゴス博士は付け加える。
■卵は善か悪か 「卵は1968年に米国心臓協会によって発表された栄養ガイドラインにおいて濡れ衣を着せられた歴史がある。」とゴス博士は言う。「このガイドラインでは、週あたりの卵摂取量が3個を超えないよう推奨された。」
ゴス博士は、この懸念は卵に含まれるコレステロールと飽和脂肪に起因するものだったと話す。以後、新たな研究によって食事中のコレステロールが血中コレステロール値に与える影響は無視できるレベルであることが明らかにされ、この推奨事項は徐々に緩和された。そしてついに今月、食事ガイドライン諮問委員会は、妊婦、授乳婦、あるいは乳幼児の最初の食事を含めて、生涯にわたり卵の摂取量を増やすことを推奨事項とする勧告を公表した。
「食事ガイドライン諮問委員会により、卵はタンパク質、コリン、ビタミンB12、セレン、ビタミンDやその他多くの必須栄養素の重要な供給源であり、成長や筋肉量の維持に重要であることが歴史的に初めて認識された。」とゴス博士は話す。
出典は『栄養と代謝』。 (論文要旨)
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