2020.8.25
, EurekAlert より:
社会的なつながりが欠如した高齢女性は肥満になることが多いが、男性の場合は孤独や社会的ネットワークの小ささが肥満には直接結びつかないようだ、というブリティッシュコロンビア大学からの報告。
カナダの大規模な加齢縦断研究のデータを用いたこの研究では、45歳から85歳の男女28,238人の社会的つながりとウエストサイズ、BMI、全身性肥満との関連を調査した。
その結果、研究者らは、未婚、死別、離別、あるいは別居の女性で腹部および全身性肥満の者が多いことを発見した。女性たちの中で結婚しておらず、独居で、月ごとの社会活動がない、社会参加の機会が限られている集団で平均ウエストサイズが最も大きかった。
この一方で、男性では、同棲していて、大きな社会的ネットワークを持っている人で平均ウエストサイズが最も大きかった。たとえば、社会的つながりが219人以上いる男性では、より小さなネットワークを持つ男性よりも肥満者が多かった。
「多くの先行研究では、結婚は男性の健康増進効果があり、女性ではそれほどではないことが示唆されているため、今回の研究結果は意外なものだった。」主任研究者のアナリン・コンクリン助教授は語る。「我々が調査した様々な種類の社会的つながりは女性の肥満と一貫した関連性がみられた。男性ではこの関連性は希薄で、時には女性で見られたものと逆の傾向も認められた。」
この研究では、この男女間の違いの理由については検討していない。しかし、コンクリン助教授は、男女間の役割の違いや、それぞれの役割に付随する社会的な期待が理由のひとつとして考えられるという。
「小さな社会的ネットワークは一種の社会的ストレスで肥満につながると考えるかもしれない。しかし、我々の研究結果では、男性においてはむしろ肥満を抑制する可能性があることが示された。大きなネットワークを保つことは男性にとってはストレス源となる可能性があるようだ。研究では男性たちが誕生日のような特別なイベントを追い、家族や社交的な集まりを企画するといった労力を妻に任せることが多いという結果が示されている。」コンクリン助教授によると、韓国人集団における先行研究でも、同じような結果が報告されているという。
要因を理解するためにはさらなる研究が必要だ、と筆頭著者のゼイナブ・ホセイニ博士は話す。
「我々の研究では社会参加の少なさが高齢女性の肥満と関連することが示されたばかりでなく、社会参加が死別した女性の肥満レベルに影響を与えることも明らかになった。様々な社会的つながりと高齢男女の健康との間に考えられる因果関係を把握するため、参加者らをさらに追跡していく必要がある。」とホセイニ博士は話す。
この研究結果は、ヘルスケア提供者が、単身者の女性をケアする際に、健康的な食事と運動に加えて、社会活動を勧める動機になるだろう、と研究者らは付け加える。
「医療従事者が、単身の、特に死別した女性に対して、肥満に対処する方法の1つとして社会的コミュニティへの参加を推奨するようになる可能性がある。このためには、明確な実施戦略と、医療関連の研究者や意思決定者の社会的つながりへの介入に焦点を当てることが必要である。」とホセイニ博士は話している。
出典は『プロスワン』。 (論文要旨)
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