2020.8.13
, EurekAlert より:
栄養と心血管疾患の専門家グループは、定期的な健康診断の際に、電子カルテに統合できる迅速な食事評価とカウンセリングを組み入れることを推奨するステートメントを米国心臓協会の専門誌『循環器』に公表した。
「食事のパターンと質は定期的な健康診断でリスク因子に対処する際に、十分に優先されていない。食事が疾病の発症と死亡率に寄与するというエビデンスを考慮すると、これは継続的なスクリーニングを行うに値するリスク因子である。」ステートメント執筆グループの議長でロードアイランド大学保健科学部のマヤ・ヴァディヴェルー助教授は話す。
世界195カ国の食事による健康影響の包括的なレポートである、「世界の疾病負担」研究の2017年の報告によると、質の低い食事は死亡の他のすべてのリスク因子を上回り、世界で1,100万人の死亡と心血管疾患死亡の約半数の原因となっている。
著者らは、15の既存のスクリーニングツールをレビューし、それぞれについて、エビデンスに基づく食事スクリーニングツールとして定期健康診断に組み入れる実現可能性を評価した。
著者らは、ヘルスケア部門で定期健康診断の際に食事の質を評価しない理由として、トレーニングと知識の不足、時間と医療費還付の欠如、短い訪問時間に対する競合する要求の多さなど多くの理由をあげている。
「しかしこれらの障壁は解消することができる」とヴァディヴェルー氏は言う。「我々は科学に基づき、妥当性があり信頼できる食事評価手法を求めている。レビューしたツールの多くは、使用するのに10分とかからなかった。」評価されたツールのうち3手法がステートメントでの採択基準を満たし、外来診療の際のフローに、食事のスクリーニングとして組み入れられる可能性があるという。パウエルとグリーンバーグによるスクリーニングツールは、野菜・果物の摂取と果糖食品・ジュースの摂取という2つの質問を尋ねている。簡易版迅速食事評価と地中海食遵守スクリーニングツールは10以上の質問から成り、主要な食品群、加工食品、アルコール摂取を網羅している。
有効な食事スクリーニングツールのポイントは以下の通り。 ・科学的根拠に基づく手法である。 ・単一の食品や栄養素だけでなく、包括的な食事パターンを評価している。 ・迅速である。 ・実行可能な次のステップを提供し、患者を支援できる。 ・経時的な食事変化を記録し、モニターできる。
「レビューしたもの以外にも他のツールが有り、追加のものが開発される可能性がある。」とヴァディヴェルー氏は話す。
ステートメントでは特定の評価ツールを保証しているわけではないが、プライマリ・ケアや専門的医療、予防医療を受ける成人向けの迅速な食事スクリーニングツールを採択するための臨床医、食生活の専門家、情報技術の専門家間での話し合いを勧めている。
「食事の質の評価に加えて重要な因子は、患者が食事目標を設定するのを助け、次回来院時にフォローアップを行うことのできる実行可能なゴールの提供である。」とステートメント会議副議長のアリス・H・リヒテンシュタイン氏は話す。
今後の研究分野として、特殊な臨床部門での患者 (小児、高齢者など) を含む様々な集団でのスクリーニングツールの検証、臨床現場におけるこれらのツール実装の実現可能性の評価が挙げられている。
健康的な食事は心血管疾患リスクを改善することができる。なにを、どれくらい食べるかは、コレステロール、血圧、糖尿病や肥満などの、コントロール可能なほかのリスク因子に影響を与えることが可能である。
出典は『循環器』。 (論文要旨)
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