2020.8.6
, EurekAlert より:
紅茶、チョコレート、ベリー類など抗酸化物質の豊富な食品には、ある種のがんを促進する効果があるかもしれない、というイスラエル・ヘブライ大学からの研究報告。『ネイチャー』誌に掲載。
小腸のがんは非常に稀だが、大腸がんは極めて多い。なにががんを大腸にひきつけているのだろうか?
研究チームは、がん変異が必ずしも悪者とは限らないことを発見したという。事実、腸のようなある種の微小環境においては、これらの変異は、身体ががんと闘い転移を防ぐのを助ける可能性があるという。
ところが、腸内細菌が、抗酸化物質の豊富な紅茶やココアのような食品から高濃度の代謝物を作り出すと、それが部分的に変異遺伝子を保護するような環境を作り出し、そのために大腸がんの成長を加速することにつながるのだという。
腸がんの98%は大腸で起こるが、研究チームによれば、大腸と小腸の大きな違いのひとつに微生物の存在がある。小腸には微生物は少なく、大腸には豊富に存在する。
Trp53遺伝子は全ての細胞に存在し、p53たんぱく質を作り出す。このたんぱく質は細胞のバリアーとして作用し、細胞の遺伝子変異を抑制している。p53が障害されると、もはや細胞は保護されなくなる。それどころか、細胞はがん化し、がんの成長と転移を助けることになる。
腸内細菌が重要な役割を果たしているという仮説を検証するために、研究チームは、変異したp53(がん促進性)たんぱく質をマウスの腸に導入した。驚いたことに、小腸においては、変異したp53は正常なp53を凌駕するがんのスーパーサプレッサー(超抑制因子)として作用した。けれども、大腸に導入された変異したp53はがんを促進した。
「腸内細菌は、ジキルとハイド効果を変異したp53たんぱく質に及ぼす。小腸ではがん細胞を攻撃したが、大腸ではがんの成長を促進した」と研究者は説明する。
抗生物質を投与すると、変異したp53たんぱく質は、もはや大腸でもがんを促進することがなくなったことから、この効果には腸内細菌が必要であることがわかったという。
研究チームがマウスに抗酸化物質の豊富なエサを与えると、腸内細菌はp53がん促進性モードを加速させるように作用した。
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
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