2020.8.4
, EurekAlert より:
マインドフルネスを基にした怒りのコントロールの治療は、コロナウイルス蔓延に伴う外出自粛で多くの困難を強いられている人々が家庭内暴力から逃れる希望の光となるかもしれない。ノルウェー科学技術大学からの報告。
「多くの人にとって、外出自粛は大きなストレスとなっている。アンガーマネジメントを必要とする人々と接している我々は、閉鎖された彼らの部屋の中で何が起こっているのか懸念している。」と長年、暴力や怒鳴りつけ、脅しなどの行為を行う人々の怒りの緩和治療に従事し、現在ノルウェー科学技術大学で研究を行っているメレーテ・ベルク・ネセット氏は語る。
COVID-19は人々から仕事を奪い、誰にも経済の先行きが予測できない事態を招き、多くの人々に将来の不安を与えている。
「経済的困難や失業、精神的障害は、怒りや暴力に関連している。ストレスのレベルは、家庭で子どもに勉強を教えなければならない保護者においても高まる。メンタルヘルス上の問題や既往症がある人々においては、逃げ場がない状況がさらに苦痛を強める。」とネセット氏は話す。
ネセット氏が125名のアンガーマネジメントの手助けを求める男性を2群に分けて行った研究では、治療の介入が良い効果をもたらすことが示された。2群のうち1つのグループは認知行動療法として用いられるブロセットモデルによる治療を受け、もう1つのグループはマインドフルネスをベースとしたストレスマネジメントセラピーを受けた。両群に属する男性たちのパートナーは、治療の前後および治療中に質問聴取を受けた。この結果、いずれの群も同程度の良好な治療効果が認められた。
治療前には参加者の男性たちの60%がパートナーに対して性行為を強要するなどの性的暴行をはたらいていたが、治療後はほとんど誰もそのような暴行を行わなかった。
また、治療前は85%の男性が暴力を行い大多数がパートナーを身体的に傷つけていたが、治療後にはその割合は10%にまで低下した。
治療前には87%の男性が脅しつけや侮蔑的発言などの精神的暴行を行っていたが、治療後にはその数は25%程度減少した。精神的暴行において他の項目に比べて減少幅が小さかった理由として、ネセット氏はパートナーが安全であると感じるまでに長い時間がかかるためだと話している。
「治療前、我々が予想していた以上に高い割合で男性たちは性的・肉体的暴行をはたらいていた。多くの男性が彼らのパートナーを叩くなどしていることは認知していたが、これほど多くの男性たちが性的暴行を行っていたことに驚いた。男性とそのパートナーの報告は差異があり、男性たちが報告するよりも多くのケースがパートナーたちから報告された。」とネセット氏は話す。
この研究はもともと、ブロセットモデルによる気分障害の治療効果を確認することが目的であった。多くの研究では対照群はプラセボを受け取るか、何も介入を受けないが、この研究では能動的な対照群としてマインドフルネスを基にした怒りのコントロール治療が施された。
「不幸なことに、ノルウェーで発生する殺人の25%はパートナーによるものだ。家庭内暴力は被害者に大きな健康的障害をもたらすため、公衆衛生上の大きな問題であり、治療を行わないことは倫理に反する。このため我々は2種類の治療をそれぞれの群に行い、これらはいずれも効果を示した」とネセット氏は説明する。
1つのグループは8回のマインドフルネスを基にしたストレスマネジメントトレーニングのグループセッションを受けた。この治療コースはアンガーマネジメントに特化したものではなく、一般的な病に対するもので内容は対象者の参加理由に関わらず事前に定義されている。
もう1つのグループは聖オラフ病院でつくられたブロセットモデルと呼ばれる認知行動療法のセッションを15回受けた。このセラピーで患者は様々な段階を踏み、暴力を止めることを第一フェーズとしている。ネセット氏によれば、なぜ暴行を行ってしまうのか理解しなくてもこれを実現することができるという。その後患者は暴力のパターンを探索し、その引き金となる状況や生じる感情、自身がどのような行動を繰り返すかをマッピングしていく。
「暴行をはたらく人の中には感情的になりやすい人がいる。この治療の中で患者は何が自身を苛つかせるのか、どのような感情や思いに特に注意を払う必要があるのかを見つけ、我々は患者が暴力に頼らずにネガティブな感情を制御するためのアクションプランを立案する。この治療の多くは患者が自分自身を理解することだ。」とネセット氏は説明している。
出典は『BMC心理学』。 (論文要旨)
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