2020.8.3
, EurekAlert より:
米国「責任ある医療のための医師の会」からの症例報告によると、1型糖尿病患者2人が野菜・果物・全粒穀物・豆類が豊富な植物性食品を基本とした食生活を送ることで、インスリン感受性やその他の検査値が改善したという。
1つ目の症例報告は、2018年に1型糖尿病と診断された女性患者のケース。診断時、HbA1cは8.7%だった。(HbA1cは6.5%以上の場合に糖尿病型と判定される)
初めのころ、彼女は低炭水化物・高脂肪食を摂っており、1日あたりの炭水化物摂取量は30g未満、肉や乳製品を大量摂取していた。血糖値は安定したものの、摂取した炭水化物1gあたりのインスリン必要量は増加してしまった。また、総コレステロールも175mg/dlから221mg/dlへと上昇。そこで2019年1月より、乳製品や卵、肉を摂らず、加工や精製をできる限り抑えた植物性食品を摂る菜食へ変えたところ、インスリン投与量を減らすことができ、HbA1cは5.4%、総コレステロールは158mg/dlまで低下したという。
「本報告は、炭水化物は糖尿病にとっての敵だという誤解に挑戦するものです。この症例報告の患者さんはその正反対のことを経験しました。「健康的な炭水化物」を増やすことで血糖コントロールが安定し、インスリン必要量が減り、全身の健康状態が向上したのです」と著者のカレオワ博士は話している。
2つ目の症例報告は、25歳時点で1型糖尿病と診断された42歳の男性。1例目の女性同様の菜食とした。炭水化物摂取量は1日あたり150gから400-450gへと大幅に増やした。すると、体重が減少し、インスリン必要量が減少、HbA1cは6.2%から5.5-5.8%まで低下したという。
著者らによると、これまでの小規模研究でもすでに高炭水化物・高繊維食が1型糖尿病患者10人の血糖コントロールを改善したことが明らかになっているという。今後は、症例報告の結果を検証し、一般化できるかを検討後にランダム化臨床試験に進みたいとしている。
菜食と糖尿病の関係についての研究では、これまでに、低脂肪の菜食が2型糖尿病に有益であることや、菜食主義者は非菜食主義者と比較して2型糖尿尿リスクが半減することが示されている。カレオワ博士は、菜食が1型糖尿病にも恩恵がある可能性に期待しているとのことだ。
出典は『糖尿病及び代謝雑誌』。 (論文要旨)
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