2020.7.30
, EurekAlert より:
スパイスとして用いられるウコン (ターメリック) に含まれる成分のクルクミンはある種のウイルスを除去するのを助ける作用があるようだ、という武漢生体工学研究所からの報告。
細胞を用いた実験で、クルクミンはアルファ型コロナウイルス属の豚伝染性胃腸炎ウイルス (TGEV) の感染を防ぐことが示された。またクルクミンは、高濃度ではウイルス粒子を殺す作用を示すようだ。
TGEVは豚に感染すると下痢、重度の脱水症状をもたらし、死に至らしめることもある。感染力が高く、2週齢未満の子豚には致命的であり、養豚業界の大きな脅威となっている。現在のところアルファ型コロナウイルスに対する承認薬はなく、ワクチンは存在するもののウイルスの拡大を防ぐことはできていない。
クルクミンの抗ウイルス作用を検討するため、研究チームは様々な濃度でクルクミンを投与した細胞にTGEV感染を試みた。すると、クルクミン濃度が高くなるほどウイルス粒子の減少が認められたという。
この研究では、クルクミンのTGEVに対する効果として、細胞に感染する前にウイルスを殺す、ウイルスのエンベロープに作用してウイルスを不活性化させる、細胞の代謝を調節しウイルスの侵入を防ぐといった様々な機序を示唆している。「クルクミンはTGEVの吸着を有意に防ぎ、直接的に不活性化させる効果を示した。この成分は、TGEV感染を防ぐ可能性がある」と筆頭著者のリラン・シェ氏は語る。
クルクミンはデング熱ウイルス、B型肝炎ウイルス、ジカウイルスなどいくつかのウイルスの複製を阻害することが報告されている。また、クルクミンには抗がん、抗炎症、抗菌などの活性があるという報告もある。さらに、クルクミンは摂取による副作用のリスクが低いことも、今回の研究でこの成分に着目した理由の1つであるとシェ氏は話す。研究者らは「ウイルスの予防と制御は、とりわけ効果的なワクチンが存在しない場合、非常に困難である。中国伝統医薬品やその有効成分は入手の容易さや副作用の少なさなどの利点があり、抗ウイルス成分のスクリーニングに適している」と話す。
研究者らは動物モデルを用いた研究で、より複雑な生体のシステムの中での作用を検討することを考えている。「さらなる研究が必要とされるが、生体内での効果を評価し、クルクミンのTGEVに対する効果のメカニズムを探索することは、この成分の抗ウイルス作用の機序を包括的に理解するための基盤となるだろう。」とシェ氏は述べている。
出典は『総合ウイルス学雑誌』。 (論文要旨)
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