2020.7.21
, EurekAlert より:
小児肥満の子どもでは、11-12歳ですでに循環器疾患が懸念されるサインがみられるようだ、というマードック小児研究所からの報告。
研究では、オーストラリアの肥満または過体重の子ども達において、11-12歳ですでに動脈硬化と内壁の肥厚のサインがみられ、成長後のメタボリックシンドローム発症リスクが高いことが見いだされた。また、小児期の肥満の時期が長いほど、これらの指標は悪化していた。
マードック小児研究所のメリッサ・ウェイク氏は、この研究結果が小児期の肥満の静かな影響と早期の介入の必要性を浮き彫りにした、と話す。 「学童期や成人後の循環器疾患のリスクを避けるために、幼児期の時点から肥満や過体重の問題を防ぐための公衆衛生的対策が必要である。」と彼女は語る。
「我々の発見は、この問題に対するシステム整備と政策実現を早急に求める世界保健機関の要請に沿っている。要求される政策には、脂肪や糖を多く含む加工食品への増税、子どもが安全に公共交通機関や徒歩で登校できる通学路の整備、地域単位での参加しやすいスポーツ活動の開催などが含まれる。」
同研究所のケイト・ライセット氏によると、先行研究では血圧のみの測定といった標準的なリスク因子にしか着目しておらず、今もなお幼児期のBMIが小児の心臓の健康にいつ、どのように影響するのかはほとんどわかっていないという。
「先行研究では、小児期の一時点でのBMIのみを頼りに、成長後の心臓の健康の指標を検討していることが多い。この場合、小児の通常の成長に伴うBMI変化の影響を見過ごす可能性がある。」とライセット氏は語る。
この研究では、オーストラリア小児縦断研究において0-1歳から9-10歳までの期間、2年ごとに身長と体重を測定した対象者1,811人のデータを基に、循環器疾患のリスクスコアを検討している。対象者は11-12歳時に、血圧、血管の健康状態、血中コレステロール値、血糖値などを測定した。
ライセット氏は、「肥満の流行は公衆衛生上の大きな問題であり、先進国における心血管リスク因子に焦点を当てた予防活動による心疾患死の緩やかな減少を脅かしている。」と話す。
「肥満の蔓延を食い止めるための政策の変革を可能にするためには、臨床分野のコミュニティの十分な協力が必要とされる。」
出典は『小児科学』。 (論文要旨)
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