2020.7.17
, EurekAlert より:
米国の店舗で販売されている無殺菌牛乳は、室温に置くと大量の薬剤耐性遺伝子を保有するようになるようだ、という米国カリフォルニア大学からの報告。
薬剤耐性遺伝子をもつ細菌を摂取した場合、他の菌に遺伝子が伝播し、耐性を広める可能性もあるという。
「もし無殺菌牛乳を飲み続けたいなら、薬剤耐性遺伝子を持つ菌の増殖を最小限に抑えるため、冷蔵庫で保存することを勧める」筆頭著者のJinxin Liu氏は述べる。
米国民の約3%が、保存期間を延長させるための加熱殺菌を行っていない無殺菌牛乳を飲用している。無殺菌牛乳はしばしば、加熱殺菌された牛乳よりもプロバイオティクス (善玉菌) が豊富だと宣伝されている。しかし研究者らは、そのような傾向は見られなかったという。
「無殺菌牛乳のサンプルに含まれる有益な菌は多くはなく、また、無殺菌牛乳を室温に置くと、加熱殺菌牛乳に比べてはるかに多くの薬剤耐性遺伝子が形成された。」
薬剤耐性遺伝子は病原体に伝搬すると、医薬品が効かなくなるスーパーバグとなるおそれがある。米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、毎年約300万人が薬剤耐性菌に感染し、3万5000人以上が死亡している。
研究者らは、5つの州の2,000店舗以上から入手した、無殺菌牛乳や様々な手法による殺菌牛乳のサンプルを調べた。無殺菌牛乳は、室温においた際の薬剤耐性菌の保有率が最も高かった。
「意図的であるにしてもそうでないにしても、無殺菌牛乳を不適切な温度で放置すると、薬剤耐性遺伝子を持つ菌を増殖させることになる」共著者のMichele Jay-Russell氏は言う。「ただ腐敗する、というだけの問題ではなく、不適切な取り扱いのリスクは極めて高い」
消費者の中には、無殺菌牛乳を発酵させていわゆるclabber (サワーミルク) を作ろうと、意図的に冷蔵庫外に放置する者がいる。共著者のDavid Mills氏によると、無殺菌牛乳で作ったclabberを摂取すると多数の薬剤耐性遺伝子を消化管に取り込むことになるという。「薬剤耐性遺伝子はどこにでも存在し、我々はそれらを体内に取り込むのを防がなければならない。」
無殺菌牛乳中の薬剤耐性遺伝子が人の健康にどのように影響するかを解明するためにはさらなる研究が必要であるが、Mills氏は、発酵乳を作りたい場合には、無殺菌牛乳の代わりに通常の牛乳と特定の菌株のスターターを使用することを勧めている。
出典は『マイクロバイオーム』。 (論文要旨)
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