2020.7.14
, EurekAlert より:
乳幼児期から父親とよく一緒に遊んでいた子供は、自分自身で行動や感情をコントロールする力が育ちやすいようだ。とはいえ、母親だけの家庭でも遊びの種類を工夫することで同様の効果が得られるという。英国ケンブリッジ大学とレゴ財団によるレビュー。
ごく幼いころ(0−3歳)からの、父親と子供との遊び方について理解を深めるため、研究グループは過去40年間に発表された78報のエビデンスを集約した。その目的は、父子での遊び方は母子の遊び方とどう異なるのか、そしてそれが子供たちの発達に与える影響を調べることである。
今回の調査結果では、全体的にみると父親と母親の遊び方には多くの類似点があるものの、父親は最も幼いころから子供と身体的な遊びをし、くすぐり、追いかけっこ、おんぶといった活動を選ぶ傾向があることを示唆している。
このことは子供たちが自分の感情の制御を学ぶ際に役立つと思われる。また、それらの能力が重要となる環境、特に就学後に、彼ら自身の行動を律するのを助けることになりそうだ。
ケンブリッジ大学のラムチャンダニ教授は、次のように述べている。「研究で明らかにできることには限界があるため、父子の遊びの影響を過大評価しないことが重要ですが、父親とそれなりの時間遊んだ子供たちは、利益を得られる傾向があります」
レゴ財団のラバーティ博士は「これは、政策レベルでは、父親だけでなく母親にも、子供たちにとって重要なごく幼い時期に遊ぶ時間と空間を与える仕組みが必要なことを示唆しています。今でさえ例えば、自分の子供を親子の集まりに連れて行く父親が、その場で唯一の父親になることは珍しくありません。文化の変化は起こり始めていますが、もっと変化するべき」としている。
人生の最初の数年間の親子遊びは、社会的に不可欠な、認知、コミュニケーション能力を養うことが知られているが、ほとんどの研究は母子に焦点を当てている。父子の遊びについての研究は、多くの場合、小規模であるか、付随的なものだった。
今回の研究では、過去40年間に報告された78件の研究データから、父親と子供が一緒に遊ぶ頻度、その遊びの性質、子供たちの発達との関連性に関するパターンについて、情報を組み合わせて分析した。
平均して、ほとんどの父親が毎日子供と遊ぶことを発見した。そして、子供がごく幼い頃から、父子の遊びはより身体的になる傾向があった。赤ちゃんの場合、単に彼らを抱き上げるか、手足をそっと持ち上げて力を出すのを助けるなどのことであるが、子供が幼児であれば、父親はふつう、追いかけっこのような、騒々しく荒っぽい遊びを選ぶようになる。
調査したほとんどすべての研究で、父子の遊びと子供が成長後に感情をコントロールする能力との間に一貫した相関関係が認められた。父親と質の高い遊びを楽しんだ子供は、多動性、または感情および行動上の問題を示す可能性が低くなった。彼らはまた、攻撃性を制御することに優れており、学校で他の子どもと意見の相違があった際にも暴力を振るう傾向が少なかったという。
その理由として考えられるのは、父親が好む身体的な遊びは、自制心の育成に特に適していることだという。
「身体を使った遊びは、子供たちが自己制御をしなければならない、楽しくて刺激的な状況を作り出します」とラムチャンダニ教授。「強さをコントロールし、やりすぎでしまった際にはそれを学ぶことになるでしょう」
「それは子供たちが対応する方法を練習できる安全な環境です。もし子供たちが間違った対応をすると、父親に叱られてしまうかもしれませんが、取り返しのつかないことにはなりません」
父子の遊びの利点はあるものの、研究者は、母子のみで暮らす子供が不利になるわけではないことを強調している。母子の場合、遊びの種類を身体的なものにすればよいということだ。
出典は『発達レビュー』。 (論文要旨)
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