2020.7.13
, EurekAlert より:
血中ナトリウム濃度の上昇はマウスの体内時計に影響を与えるようだ、というマギル大学からの報告。この発見は、長距離旅行やシフトワークによる悪影響を改善する新たな道筋となるかもしれない。
マギル大学神経学・神経外科部のクレア・ギゾウスキー博士とチャールズ・ボーク教授が発表したこの研究は、食塩水を飲ませたマウスにおいて、脳の体内時計を支配する視交叉上核に関連するニューロンが活性化されることを初めて明らかにした。
概日リズムを形成する体内時計は、からだの細胞と組織を1日の中の時間変化に同調して適応させている。時差ボケやシフトワークによりリズムの乱れが長引くと健康に悪影響をおよぼす。
日光は体内時計を調節する主要な因子として知られているが、生理学的要因が視交叉上核の調節にどのように影響するかは明らかにされていない。
「我々の研究は、視交叉上核が生理学的な信号を受け取り、またこの信号によって体内時計の時間が調節されていることを初めて明らかにした」とボーク教授は語る。
研究者らは、脳内の終板脈管器官に食塩感受性が高いニューロンを発見し、これがこの刺激によって、通常は眠っている時間帯に体内時計を活発化させることを見出した。
「この結果は、我々が体内時計の速度を上げる方法を持ち、長時間の旅行や季節性の仕事のタイムスケジュールの変化により早く適応できる可能性を示唆している」とギゾウスキー氏は解説する。
研究者らは、食事による自然な血中ナトリウム濃度の上昇の影響と、人においても同様の現象が起こるかどうかの知見を確立することを今後の展望としている。
「少量の食塩は身体に有益で危険性はないものの、多量を摂取した場合には毒性があることが懸念の1つである」とボーク教授は付け加える。「今回の知見が人にとって安全で簡便な方法で適応できるか、さらなる検討が必要だ。」
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
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