根拠のない陰謀理論がオンラインでどのように出現するかを理解する新しい方法を提供する米国カリフォルニア大学からの研究報告。

研究チームは、暴かれた陰謀理論のストーリーテリング要素と、本当のニュースに現れたストーリーテリング要素の違いを示している。このアプローチは、COVID-19を含む他の陰謀論が（たとえ事実が存在しなくても）なぜそしてどのように広まるのかを理解する役に立つだろうという。

本研究は、洗練された人工知能と、民間伝承の構造に関する深い知識を組み合わせ、いかにして無関係な事実と誤った情報が、バラバラであれば速やかに崩壊する物語のフレームワークに結びつくかを説明するものである。

AI分析によって生成したデータは、研究チームが、各々の物語の主要なサブプロットのレイヤー、カギとなる人々をつなぐ線、それらのレイヤーの中および間にある場所と施設によって、語りをグラフ化することを可能にした。

陰謀論であろうと実際のニュース記事であろうと、物語の枠組みはストーリーラインのすべての要素間の関係によって確立される。そして、結局のところ、陰謀論は事実と性格を結びつける接着剤として機能する特定の要素の周りに形成される傾向があるという。

本研究では、現実の事件である2013年に米国ニュージャージー州で起きた「ブリッジゲート」スキャンダルのニュースの拡散と、架空の事件である2016年にワシントンDCで起きた「ピザゲート」神話（ピザレストランが、ヒラリー・クリントンを含む著名な民主党の役人を巻き込んだ、子供の性的人身売買リングのセンターになっている、という完全にねつ造された陰謀論）が分析された。

「ピザゲート」における陰謀論は、ウィキリークスによって2016年にリリースされたハッキングされた複数のEメールの創造的解釈からでてきたもので、研究チームは、ウェブサイトRedditとVoat上の掲示板に投稿された2016年4月から2018年2月までの18,000件近くの投稿を解析した。

「ピザゲートについての語りのレイヤーと構造を解析した結果、もしウィキリークスが物語の要素からなくなれば、残りのつながりは保持されなくなることを発見した」と筆頭著者のティモシー・タンゲリーニ博士は述べている。「この陰謀論においては、ウィキリークスのEメールの束とその内容を創造的に解釈した理論家の仕事だけが陰謀をまとめ上げている唯一の接着剤だった。」

対照的に、実際のスキャンダルをめぐるストーリーは、それが真実であるため、ストーリーの特定の要素がフレームワークから削除されても、立ち上がる傾向があると述べている。「ブリッジゲート」スキャンダルの場合、ニュース報道からいくつものスレッドが削除されたとしても、物語は纏りを維持した。関係するすべての登場人物が、ニュージャージー州の政治における彼らの役割によって、複数のつながりのあるポイントを持っていたからである。

「それらはすべて同じドメイン内にあり、この場合ニュージャージー州の政治は削除に関係なく存在し続けるだろう」とタンゲリーニ博士は言う。「これらの接続は、陰謀論が行うのと同じ「接着剤」を必要としないのである。」