2020.7.3
, EurekAlert より:
家庭用ガスレンジを使用すると、すぐそばにいた人の血圧が低下するという意外な効果が明らかになった。ガスの燃焼により発生した二酸化窒素によるもののようだが、長期的な健康影響などは不明だ。英国キングスカレッジロンドンによる研究。
この研究では、12人の健康な被験者の血液中の成分と心血管系の変化を調べた。まず、使用中の家庭用ガスレンジの隣に90分間座った後、通常の二酸化窒素レベルの場所に90分間座った。そしてまた別の機会に、通常の二酸化窒素レベルの場所に3時間座り、それぞれの場合の状態を比較した。
すると、ガスレンジの隣にいた場合、空気中の二酸化窒素レベルが10倍に増加し、45分経過後には血圧が5 mmHg低下していることがわかった。また、血中の亜硝酸塩の濃度が15分後に15%増加することも明らかになった。
先行研究から、緑の葉野菜やビートルート(ビーツ)に含まれる硝酸塩が体内で亜硝酸塩に変化し、血圧を下げる働きのあることが示されている。今回の研究では、体が二酸化窒素を処理するときに亜硝酸塩も作られる可能性があることを示唆しており、食事から摂取した硝酸塩に焦点を当てた先行研究と、二酸化窒素の吸入の研究とを結び付ける初めてのものだ。
二酸化窒素は大気汚染物質の代表格ともされ、呼吸器疾患の症状悪化との関連が明らかになっているが、心臓と循環への短期的な影響はよくわかっていない。特に、家庭用ガス器具やガスレンジを備えたキッチンでは、街なかよりも高いレベルの二酸化窒素に曝されると考えられるものの、健康への影響が懸念されるPM2.5などの微小粒子状物質は少ない。
このユニークな研究は、心臓と循環に対する二酸化窒素の急速な影響のいくつかに光を当てるのに役立つ。過去の大気汚染に関する研究では、血液中の亜硝酸塩が二酸化窒素に由来するのか、それとも、炎症を引き起こし、亜硝酸塩に変換される一酸化窒素を生成する粒子状物質に由来するのかは不明だった。この研究では、血液中の亜硝酸塩は二酸化窒素に由来することを示唆している。
重要な点は、健康な人では二酸化窒素への短期暴露のは有益な可能性があるものの、長期暴露からの悪影響や喘息患者の短期暴露の悪影響のおそれは否定できないことだ。
研究グループはさらなる研究により、これらの発見をより大規模な研究で確認し、より多様なコホートへの影響を調査したいとしている。
出典は『循環器研究』。 (論文要旨)
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