2020.7.2
, EurekAlert より:
(※この記事は専門家向けです。まだ確定していない最新の知見を含みます。)
子どもたちがCOVID-19の影響を受けにくいのは、はしか・おたふく風邪・風疹の混合ワクチンである「MMRワクチン」のおかげかもしれない、という仮説をリトアニア・カウナス工科大学の研究者らが立てている。
彼らの研究グループは、新型コロナウイルスと、はしか(麻疹)ウイルスや風疹ウイルスの持つ糖たんぱく質の30ものアミノ酸残基は、配列が類似していることを発見した。このことから今回の仮説が立てられたわけだが、裏付けには実験的な分析が必要だ。
すでに世界中で多くの感染者・死者をもたらしているCOVID-19だが、中国・イタリア・韓国の感染者の詳細なデータによると、10歳未満の子どもは感染しにくく、症状も軽度で済む傾向があるとされている。
子どもがCOVID-19の影響を受けにくい理由はまだ不明ではあるものの、今回リトアニアのカウナス工科大学などが行った研究で、MMRワクチンの接種がその理由となり得る証拠を提供した。
「MMRワクチンの接種によって子どもが産生する抗体は、SARS-CoV-2の持つスパイクたんぱく質の一部であるたんぱく質(エピトープ)を認識できる可能性があります。これらの抗体は、特に気道の上皮層で結合をブロックし、ウイルスが細胞に入り込むのを防ぎます。
私たちは、MMRワクチンが子どもを保護していること、そしてそれは麻疹・風疹ウイルスとSARS-CoV-2との配列の相同性によるものだという主張を支持する最初のグループです」とカウナス工科大学のコジウス教授は述べている。
最近の研究で、MMRワクチン接種よって抗体レベルは15〜20年間保持される可能性が示されている。したがって、COVID-19に対しても効果が最長15〜20年続く可能性がある。ただし、仮説を実証するためには、麻疹および風疹ウイルスのポリクローナルおよびモノクローナル抗体に対するSARS-CoV-2の精製スパイクタンパク質の細胞および生体試験を含む実験的研究が必要だ。
※補足:日本で幼児期に公費で接種が行われているのは、麻疹・風疹の2種混合であるMRワクチン。おたふく風邪のワクチンは希望者のみ自費にて単独で接種されている。
出典は『分子生科学の最前線』。 (論文要旨)
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