2020.7.1
, EurekAlert より:
腸内細菌が線虫の食行動に影響を及ぼすかもしれない、という米国国立神経疾患・脳卒中研究所からの研究報告が『ネイチャー』誌に発表された。
細菌は線虫の主要な食物である。本研究では、研究チームは線虫が異なる種の細菌を摂取したとき、通常は忌避するオクタノール(アルコールの一種)にへの反応が変化することを発見したという。
研究チームは、線虫の腸にJUb39という生菌が存在するとオクタノールの方へ動くことを発見した。これはこの細菌によって生産される物質によって線虫の行動が少なくとも部分的に制御されていることを示唆するものである。
脳の化学物質チラミンがこの反応に重要な役割を果たしている可能性があるという。線虫ではチラミンはオクトパミンに変換され、回避行動を制御する感覚ニューロンの受容体を標的とする。研究チームは、細菌によって生成されたチラミンがオクトパミンのレベルを高め、これらのニューロンによって駆動されるオクタノールの回避を抑制することにより、線虫をオクタノールに対してより耐性にすることを示唆した。
遺伝子操作でチラミンを作らない線虫を作成して実験したところ、この線虫でJUb39が腸内にいてもオクタノールへの回避が抑制されないことがわかった。これは細菌が作り出すチラミンが、線虫の不足した内因性チラミンを補う目的で使われるからだろう、ということだ。
「このように細菌は宿主の意思決定プロセスを制御することができ、匂いへの反応や食品の選択に影響を及ぼす可能性がある」と主任研究者のピアリ・セングプタ教授はコメントしている。
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
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