2020.6.29
, EurekAlert より:
コーヒーの5種類の苦味成分の苦味受容体との反応特性を明らかにした独ライプニッツシステム生物学研究所とミュンヘン工科大学からの研究報告。
コーヒーはその苦味にも関わらず(それ故に)世界中で親しまれている。コーヒーの苦味にはカフェインのような成分が種々の割合で寄与している。研究チームは、苦味物質と苦味受容体との分子レベルの相互作用について新たな洞察を得たと発表した。
カフェインは確かにコーヒーの中で最も良く知られた苦味物質ではあるが、これだけがコーヒーの苦味を形成しているわけではないようだ。研究チームは、人工舌のような細胞ベースの試験装置と分子-受容体相互作用の分析を通じて、コーヒーに含まれる5種類の苦味物質を検討した。アラビカ豆から同定されたモザンビオシド、その焙煎生成物ベンガレンソール、そして良く知られたコーヒー成分である、カフェストール、カーウェオール、カフェイン。
結果に基づいて研究チームは、25あるヒトの苦味受容体のうち、カフェイン成分に反応するのは主として2つの受容体であると推測している。受容体TAS2R46とTAS2R43を刺激するには比較的高濃度のカフェインが必要になるが、他の4種類の成分は驚くほど少量しか必要なかったという。TAS2R43受容体を活性化するのに必要なカフェイン濃度は、同じ活性を得るのに必要なモザンビオシドまたはベンガレンソールの30-300倍高かった。
更なる研究によって、コーヒーに含まれる苦味物質は相互に干渉し合うことも明らかになったという。カーウェオールとモザンビオシドは、TAS2R43受容体に同じような結合特性を示す。モザンビオシドに比べて、けれども、カーウェオールの受容体活性化は比較的弱く、濃度によっては、モザンビオシドによる活性化を阻害することがわかったという。
「従って、カーウェオールは、より効果的な苦味物質の結合を妨げることで、TAS2R43受容体における苦味を低下させる可能性がある」と主任研究者のマイク・ベーレンスは述べている。これは、カーウェオールが含まれるトルココーヒーやエスプレッソなどフィルタを使わないコーヒーでなんらかの役割を果たしている可能性があるとのことである。
「コーヒーの苦味成分は、25ある苦味受容体の2つだけを特異的に活性化するようだが、活性化されるどちらの受容体も、舌にだけ存在するわけではない。TAS2R43受容体は胃にもあり、胃酸分泌の制御に関係しているかもしれない。特にベンガレンソールのように、微量で受容体を活性化する成分は、その可能性が高いだろう。」
遺伝子変異によってTAS2R43受容体を持たない多くの人がおり、これがコーヒーに対する味覚に違いや耐性の違いに現れている可能性もある、とライプニッツシステム生物学研究所のベロニカ・ソモーツァ所長はコメントしている。
出典は『農芸・食品化学雑誌』。 (論文要旨)
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