2020.6.25
, EurekAlert より:
大豆に含まれるたんぱく質の誘導体が脳に働きかけ、記憶障害を改善することが明らかに。九州大学が行った動物実験による研究。加齢による脳機能低下を食べ物で予防・改善できる可能性が示唆された。
大豆のたんぱく質が分解されて生じるこの成分は、たんぱく質の構成要素として知られるアミノ酸を2つ持つ、ジペプチドの一種だ。今回使用されたジペプチドの独特な点は、マウスの胃から脳へとそのままの状態で到達することが知られている唯一のものであることだという。
「消化中に分解される可能性に加えて、ペプチドは、血液から脳に到達するために非常に選択的な関門を通過するという課題に直面します」と九州大学農学部の松井利郎教授は話している。
「私たちの以前の研究は、旅をすることができるジペプチドを特定した最初のものでしたが、新しい研究では現在、それが実際にマウスの記憶に影響を与えられることを示しています」
研究者らは、マウスを用いた実験を行い、アルツハイマー病をシミュレートするために一般的に使用される化学物質を脳内に注射し、急性的に記憶障害を誘発するようにした。この注射の前後に計2週間に渡り、Tyr-Proと名付けられたジペプチドをマウスに経口摂取させてその効果を調べた。
結果、ジペプチドを摂取したマウスは、短期記憶を評価する試験、長期記憶を評価する試験のいずれにおいても記憶の改善作用がみられた。
これまでにも、数種のペプチドが脳機能の低下を軽減できることを示唆する報告があったが、本研究ではペプチドがそのままの形で血液脳関門を通過し脳組織に到達できるということを世界で初めて実証した。
「これらの利点が人間にあてはまるどうかを確認するための研究はまだ必要ですが、これが記憶力の低下を防ぎ、改善するのに役立つ機能性食品へのステップであることを願っています」
出典は『npj食品の科学』。 (論文要旨)
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