2020.6.23
, EurekAlert より:
最も一般的なコレステロール降下薬の1つ・スタチンによって特定の腸内細菌叢のタイプが改善されたことが明らかになった。スウェーデン・イェーテボリ大学など14のグループによる共同研究。
以前より、腸内細菌叢とさまざまな代謝関連および心血管疾患との関連が発見されているが、今回の研究では、スタチンを摂取した被験者たちの腸内細菌叢の改善が示された。直接的なメカニズムは特定されていないものの、この結果は疑う余地のないものだ、と研究グループは自信をみせている。
著者の一人、イェーテボリ大学のベッケド教授は、代謝における腸内細菌叢の役割に焦点を当てている。
「この研究は因果関係を供するものではありませんが、定評があり、臨床的に使用されてきた薬が腸内細菌叢をどう変えるのかを見るのはわくわくします。スタチンが腸内細菌に直接影響するのか、またはこの系統の薬が腸と免疫細胞の両方に影響を及ぼし、それによって微生物叢の改変を助けているのかについては、時が経てばわかるでしょう」
彼らの共同研究グループによるプロジェクトでは、代謝および心血管疾患の程度がさまざまな2,000人以上の欧州人を対象とし、綿密な調査がなされている。
腸内細菌叢は人それぞれ異なっているが、細菌の構成や数によっていくつかの型にグループ分けされており、エンテロタイプと呼ばれている。そのうちの一つ、「Bact2」型には、フェカリバクテリウムなどの抗炎症細菌があまりみられない。これらの細菌には、免疫システムを強化する働きがある。
Bact2は、炎症性腸疾患(IBD)、多発性硬化症、うつ病の患者に多く見られるエンテロタイプだ。本研究では、このタイプは肥満者(18%)の方が、非肥満者(4%)よりもはるかに多いことが発見された。
また今回初めて、スタチン療法を受けた被験者群でBact2を持つ人の割合が減少し、より正常な腸内細菌叢がもたらされるというスタチンのプラスの効果が明らかになった。これとともに、様々な研究結果が、将来、薬剤を用いて腸内細菌叢を変化させる新しい治療法を切り開いていく。
「おそらく、スタチンのような薬剤は腸内環境を変えるために用いることができるでしょう。しかし、それにはさらなる研究が必要です」とベッケド教授は述べている。
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
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