2020.6.18
, EurekAlert より: 
がんや慢性感染症と戦うために、免疫系は長い期間にわたって活性を維持しなければならないが、免疫系もしばしば疲労する。ドイツがん研究センターはマウスを用いた実験で、骨格筋が免疫系の機能維持を助けることを発見した。
多くの場合、がんや重篤な感染症では、ひどい体重低下で筋量が減少する。悪液質と呼ばれるこの状態に加えて、患者はしばしば免疫系の弱体化にみまわれる。理由のひとつに、ウイルス感染細胞やがん細胞を殺傷するT細胞の機能低下がある。
T細胞活性の低下につながる過程の大部分は依然として不明であるが、これが悪液質と関連しているということが明らかになってきた。T細胞は骨格筋量の低下に関係することがわかったが、どのように骨格筋がT細胞の機能に影響するのかは依然として不明である」と主任研究者のゴーリャン・クイは述べている。
研究チームは、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルスに感染したマウスを使用した。これは慢性感染症のモデル系として良く知られている。研究チームは、このマウスの骨格筋の遺伝子発現を解析して、慢性感染症においては筋肉細胞がインターロイキン-15というメッセンジャーの放出を上昇させることをつきとめた。このサイトカインは、T細胞前駆体を骨格筋に定着させる。その結果、それらは空間的に区切られて慢性炎症との接触から保護される。
「もしT細胞が、感染とアクティブに戦う上で、その機能を十分に発揮できなくなったら、前駆体細胞が筋肉から遊走して、機能のあるT細胞に分化する」と筆頭研究者のジンジア・ウーは述べている。「これによって免疫系は長期にわたってウイルスと闘い続けることができるのである。」
では、定期的なトレーニングは免疫系を強化するのだろうか? 我々の研究では、より筋量の多いマウスは慢性的ウイルス感染により良く対処できた。だが、その結果がヒトにもあてはまるかどうかは、将来の検討を待つ必要がある」とゴーリャン・クイはコメントしている。
出典は『サイエンスアドバンス』。 (論文要旨)
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