2020.6.17
, EurekAlert より:
皆がマスクを着用することで新型コロナウイルスの感染拡大を抑えられることや、ロックダウンとの併用により第二波を防止できることが、英国ケンブリッジ大学などのモデリング研究より示された。
この研究では、ロックダウンだけでは新型コロナウイルスの再拡大を防止できないが、症状の有無にかかわらず多くの人がマスクを着用することで感染率を劇的に低下させられる可能性を示唆している。マスクの種類については、効果が限定的といわれてきた自家製のマスクであっても有効だという。
論文の著者スタット博士は「一般の方々が広くマスクを着用すれば、人との距離やロックダウンと組み合わせることで、有効なワクチンができる遥か前にパンデミックを管理し、経済活動を再開するための受け入れやすい方法を提供するかもしれません」などとしている。
共著者のレクテ博士は、「広くマスクを着用することから失うものはほとんどありませんが、得られるものは相当なものになるでしょう」と話している。
新型コロナウイルスは、その粒子を含んだ空気中の飛沫を介して伝染し、特に会話や咳、くしゃみなどをした際に感染者から放出される。
最新の研究で、ケンブリッジの研究者は、個人間の拡散の力学と人口レベルのモデルを関連付け、マスクの着用とロックダウンの期間を組み合わせたさまざまなシナリオを評価した。モデリングには、感染の段階や空気を介した伝染が含まれていた。さらに、顔を触る回数の増加など、マスク使用の否定的な側面についても検討した。
パンデミックが鈍化するためには、基本再生産数 (感染者がウイルスを感染させる人数)を1.0未満に保つ必要がある。この研究では、人が公共の場所にいるときに常にマスクを着用すると、症状が現れてからマスクを着用する場合よりも、基本再生産数を減らす効果が2倍に増えることがわかった。
またいずれのモデリングにおいても、人口の50%以上がマスク着用を習慣化することで、COVID-19の基本再生産数は1.0未満に減少し、その後の感染者数の波が緩和され、ロックダウンはよりゆるやかなものが可能になった。
公共の場でより多くの人々がマスクを着用したモデリングでは、ウイルスの広がりはさらに減少した。マスク着用率が100%になると、ロックダウンとその解除との組み合わせにより、ワクチン開発までに必要と思われる18か月間、新規感染を予防した。また、複数のモデリングにおいて、皆がマスクを着用することで、第2波を防げることが示唆された。
さらに研究チームはマスクのさまざまな効果を調査した。以前の調査では、綿のTシャツやふきんで作られた自家製のマスクであっても、感染防止に90%の効果があることが証明されている。
今回のモデリングでは、基本再生産数が4.0と非常に高かった場合でも、全員が75%の効果のあるマスクを着用した場合、ロックダウンすることなく1.0まで下げることができるとしている。
また実際、吐き出された飛沫をわずか50%しかとらえられないマスクを着用していたとしても、そして頻繁に顔に触れたりマスクを調整したりすることで着用者自身の汚染リスクを高めてしまったとしても、人口レベルでは利益を提供するという。
共著者であるグリニッジ大学のコルビン教授は、マスクの着用は主に感染者から他者を守ることになるとし、「私のマスクがあなたを守り、あなたのマスクが私を守る」といった明確なメッセージの必要性を訴えている。今月15日から公共交通機関でのマスクの着用が義務付けられた英国だが、日常生活の再開のためには常に皆がマスクを着用することだとしている。
出典は『英国王立協会論文集・シリーズA』。 (論文要旨)
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