2020.6.8
, EurekAlert より:
バーコードを付けた微生物胞子(barcoded microbial spores:BMS)システムという新しいアプローチが発表された。米国ハーバード大学の報告。
これは、ユニークなDNAバーコードを組み込んだ合成胞子により、標識を付けて対象物の起源を追跡するための、非常にフレキシブルで分解能の高いシステムであり、食中毒の起源を特定するときに特に有用だと考えられるという。
対象物の起源を迅速かつ正確に決定できる能力は、野菜を栽培場所までたどることや偽物の製造を特定するうえで重要となり得るが、現在の標識技術は大きな労力を要し、容易に破壊されてしまうことが多い。
天然の微生物の偏在性、微生物の独特な集団、および対象物が自らの環境のユニークな微生物組成を取り入れる能力を考慮して、起源を決定するために対象物の微生物シグネチャーを利用することが、標準的な標識法の代わりになりうることが示唆されている。
しかしこれも、広範囲で費用のかかる環境マッピングの必要性などさまざまな課題に直面している。今回ジェイソン・キアンらが、遺伝的に改変した微生物を持続的な分子標識として使用する新しい方法を報告した。
キアンらは、SHERLOCK(新しい携帯型のCRISPRベースのDNA検出デバイス)などのさまざまなツールを用いて迅速に同定できる、ユニークなDNA「バーコード」配列を持つ枯草菌と出芽酵母の合成生育不能株を作製した。
対象物や環境中に散布すると、BMSはさまざまな表面に数ヵ月間残留し、標識された胞子は接触した他の対象物に移動する。
キアンらは、このシステムが食品の起源の決定と、食物汚染の起源の迅速な追跡に特に適用できることを示した。DNAにバーコードを付けたB. thuringiensisは,洗浄し調理した後も標識を付けた製品上で検出可能であった。
関連パースペクティブ欄では、米国ワシントン大学のジェフ・ネヴァラが、このアプローチについてより詳細に議論している。
出典は『サイエンス』。 (論文要旨)
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