2020.5.29
, EurekAlert より:
多くの消費者製品に含まれる化合物への曝露が生涯にわたる体重増加し易さへの引き金になっている可能性がある、という米国ベイラー大学からの研究報告。
最近まで、科学者は肥満や脂肪肝のような疾患は、過剰なエネルギーや脂肪摂取、身体発動の欠如が引き金となる脂質代謝の異常の結果だと考えていた。けれども、ベイラー大学の研究チームは、様々な消費者製品に含まれる化合物への曝露に注目した。これらの化合物が脂質関連の代謝疾患や体重増加の引き金になるというのである。
「先行研究は、いくつかのホルモン様物質がヒトの肥満に関連するという強力なエビデンスを供給しているが、我々の初めての研究によって、これらの化合物に直接曝露したヒト細胞に対する細胞性および代謝性効果が占め得された」と主任研究者のレイモン・ラバード助教授は述べている。
研究チームは、オビソゲン(肥満原)を疑われる化合物を同定するために実験を行った。オビソゲンとは正常な代謝プロセスを撹乱して肝臓の脂質プロフィールに異常をもたらすような化合物のことである。
不健康な栄養状態と身体活動の欠如が肥満の主要な寄与因子であることは良く知られているが、近年脂質関連疾患の引き金となる化学物質の可能性が注目されるようになった、とラバード助教授は言う。オビソゲンへの曝露、特に乳幼児期における曝露は、正常な代謝プロセスを撹乱し、生涯を通じて体重が増えやすい体質を作り出すという。
2000年には、世界中で推定10万種の化合物が販売されていた。その数はさらに増加し、現在では35万種に達するという。
疾患に関与する化合物は、タバコ、汚染大気、殺虫剤、農薬、難燃剤など、そして消費者製品の多くにもある種の化合物が含まれている。過去には、塗料、セメント、蛍光灯バラスト、シーラント、接着剤に含まれる工業用化合物が問題になっていた。
研究チームは、メタボロミクスと分子毒性学の分野で確立された手法を駆使して、肥満などの疾患に関連する脂質の比率が、環境オベソゲンへの曝露によって変化したかどうか、もしそうなら、どの程度の変化を及ぼしたかを調べた。
研究の結果、ロシグリタゾン、ペルフルオロオクタン酸、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、およびトリブチルスズへの曝露によって肝細胞の総脂肪は上昇し、特にジグリセリドとトリグリセリド、ホスファチジルコリンの生産が顕著であることが明らかになった、と筆頭研究者のマルゴ・フランコは述べている。もう一つの新奇な発見は、これらの効果が、しばしば環境中で見つかる、人が常に曝露するレベルの濃度の化合物に曝露した細胞で観察されたことだという。
加えて、研究チームは蛍光顕微鏡を用いて、有意な脂質の細胞内蓄積を明らかにした。
本研究は、細胞レベルでの化合物への曝露による分子生理学的変化を特定の脂質の定量的な変化として報告した数少ない研究のひとつである、とラバード助教授は述べている。
出典は『毒物学応用薬理学』。 (論文要旨)
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