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[栄養]  ケトン食で腸内細菌叢、免疫細胞が変わる
2020.5.25 , EurekAlert より:   記事の難易度 3
  

超低炭水化物・高脂肪食で知られるケトン食は、腸内細菌のバランスを大きく変化させたり、感染症から身を守る免疫細胞の一種を減らしてしまうことが明らかに。一方で、この免疫細胞は自己免疫疾患との関連も指摘されていることから、場合によっては健康上の利点につながる可能性もあるという。米・カリフォルニア大学の研究。

ケトン食は炎症を軽減し、体重減少と心臓の健康を促進する利点があるなどと主張されていることから、近年関心を集めている。この食事法は人間の腸内細菌に劇的な影響を与えることが、今回の小規模コホート研究から明らかになった。さらに動物実験では、ケトン体そのものを投与すると、最終的には炎症を抑制する可能性がある方法で腸内細菌叢に直接的に影響を与えることが示された。この結果は、腸に影響を及ぼす自己免疫疾患に対してケトン体が治療に役立つ可能性が示唆された。

いわゆる普通の食事で主要なエネルギー源となるのは炭水化物だが、ケトン食では強制的に脂肪の摂取量を増やして第一のエネルギー源とするため、炭水化物の摂取量は激減する。体内のブドウ糖が枯渇すると、ブドウ糖に代わるエネルギー源として身体は脂肪を材料にケトン体を生成する。この代謝のシフトに健康上の多くの利点がある、とケトン食の支持者らは主張している。

「私はこの可能性に興味を持ちました。私たちの以前の研究は、高脂肪食がマウスの代謝や他の疾患を促進する腸内微生物叢の変化を引き起こすことを示したのですが、脂肪含量がさらに高いケトン食が病気を予防または治療さえするための方法として提唱されたからです」と論文著者のターンバウ准教授は述べている。

そこで彼の研究チームは、過体重または肥満の非糖尿病成人男性17人を対象に、代謝病棟に2か月間入院してもらい、食事・運動レベルを慎重にモニターし制御した。

対象者は2群に分けられ、研究開始から4週間、エネルギー産生栄養素の比率が異なるいずれかの食事を摂ってもらった。

「標準食」群:炭水化物50%、たんぱく質15%、脂質35%
「ケトン食」群:炭水化物5%、たんぱく質15%、脂質80%

4週間後、2つの群の食事内容を交代させ、研究者が2種の食事の変化が対象者の微生物叢をどのように変えたかを調べられるようにした。

対象者の便サンプルに含まれる微生物のDNAを分析したところ、標準食とケトン食の交代により、参加者の腸内細菌叢では、放線菌門、バクテロイデス門、ファーミキューテス門の比率が劇的に変化し、19の異なる細菌属の重要な変化が示された。研究者らは、ケトン食において最大の減少を示した特定の細菌属(一般的なプロバイオティクスであるビフィズス菌)に焦点を当てた。

ケトン食による腸内細菌の変化が健康にどのように影響するかの理解を深めるために、研究者らはマウスを用いた実験を行い、ケトン食によって変化した微生物群が特に免疫細胞Th17の数を減らすことを示した。Th17は感染症に対抗するために重要なT細胞の一種だが、自己免疫疾患における炎症を促進するともいわれている。

マウスの食事を低脂肪食→高脂肪食→ケトン食へと徐々に切り替えた追跡実験では、高脂肪食とケトン食が腸内細菌叢に反対の影響を与えることが確認された。この結果は、食事中の脂質の量が、炭水化物欠乏状態でのケトン体産生を促進するレベルにまで増加すると、腸内細菌叢の反応が異なることを示唆している。

研究チームは、マウスの食事が標準食からより厳格な炭水化物制限へと移り変わるにつれて、腸内細菌も変化を始め、ケトン体のゆるやかな増加と相関している様子を観察した。

「これは少し意外でした」とターンバウ准教授は語っている。というのも、ケトン食を始めたばかりの人では、炭水化物の摂取量がある一定量以下になってからケトン体の生成が急に始まるものと考えていたからだ。しかし、今回の結果から、ケトーシスの影響は極めて迅速に及ぶことが示唆されたという。

さらなる実験では、標準食を摂らせたマウスに直接ケトン体を投与することで、ケトン食を摂らせた場合と同様に腸内細菌叢の変化を起こせることを発見した。「多くの人々にとって、厳密な低炭水化物またはケトン食を続けることは非常に困難ですが、将来の研究で、ケトン体そのものによって引き起こされる腸内細菌叢の変化による健康上の利点があることが判明した場合、はるかに受け入れやすい治療アプローチにつながる可能性があります」などと准教授はまとめている。

出典は『細胞』。 (論文要旨)      
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