2020.5.20
, EurekAlert より:
「病原性変異体」と呼ばれるある種の遺伝子変異は、実質的に心血管系疾患とがんのリスクを高めるが、それを見つける検査は現行の臨床診断には含まれていない、という米国マサチューセッツ総合病院からの研究報告。
研究チームは、人口のほぼ1%がそのような病原性変異体を保有していると推定している。保有者は著しくリスクが高いが家族歴に基づいてそれを確実に特定することはできなかったという。
英国バイオバンクから49,738人の中年成人のデータを解析した。研究では3つの遺伝子に焦点が当てられた。家族性高コレステロール血症(心血管系疾患のリスクが高まる)、遺伝性乳がんと卵巣がん、リンチ症候群(大腸がんと子宮がんのリスクが高まる)。
研究チームは、441名(0.9%)が病原性変異体のキャリアであることを発見した。家族性高コレステロール血症は0.3%、乳がん・卵巣がんは0.5%、リンチ症候群は0.2%だった。
3つの遺伝子すべてで、キャリアは実質的なリスクが高かった。家族性高コレステロール血症は21%対非キャリア9%、乳がん・卵巣がんは28%対非キャリア8%、リンチ症候群は22%対非キャリア2%だった。
「本当に衝撃的だったのは、家族歴という、わたしが臨床でいつも使っている方法では、大部分の高リスク者を特定できなかったことだ」と主任研究者のアミット・V・ケーラ医師は語っている。
3つぜんぶを合わせて、全体の4割のキャリアにしか血縁者にこの疾患がみられなかったという。家族歴と病原性変異体の両方を持っている人のリスクが最も高かった、とケーラ医師は語っている。
「遺伝子検査は、すでにこの疾患に影響を受けている個人が主として受けるが、今回のデータは、より広範囲の集団にそれを実施する必要性を示唆している」と筆頭研究者のアニルド・パーテル医師は語っている。
早期に診断されれば、薬物治療やより早期の乳がん検査や大腸内視鏡検査、外科手術等によってリスクを低下させることもできるだろう。
出典は『JAMAネットワークオープン』。 (論文要旨)
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