2020.4.13
, EurekAlert より:
運動が代謝に及ぼす影響は、これまで考えられてきたよりもはるかに大きいことが示された。また、運動による代謝産物の好ましい変化がみれられなかった人においては、ある物質のレベルが高いことも明らかになった。豪シドニー大学の研究。
この研究は、食生活、ストレス、睡眠パターン、および労働環境における対象者間の違いを入念にコントロールしながら運動の代謝効果を調べた、世界初のものだ。
「これらの結果は、運動に対する代謝の適応がこれまで報告されたきたよりもはるかに大きいことを示しています」と著者であるシドニー大学のオサリバン博士は述べている。「この結果は、代謝に対する運動の広範な利点についての知識を高め、効果の真の大きさを初めて明らかにしています。これは、心血管疾患を予防するプログラムの重要な要素として運動をすべきであるという説を強化するものです」
運動の効果を研究する際の主要な課題の1つは、対象者間で異なり、結果に影響を与える可能性のある要因をコントロールすることだ。例えば、年齢、性別、体重、研究開始時点の心肺機能、食習慣、睡眠パターン、仕事内容(肉体労働/デスクワーク)、飲酒、喫煙などだ。
研究チームは、コントロールされた条件下において運動を研究することによって上記の要因による差を克服し、身体への影響の真の程度を明らかにすることを目的とした。そのため対象者を、年代、心肺機能、住居、睡眠パターン、食生活、運動量を同じくする健康な男性兵士とした。
運動の主な利点の1つは代謝上のものだ。代謝とは、いかにして体が食物をエネルギーに変換し、不要物を排出するかということだ。代謝によって生成される物質は代謝産物と呼ばれる。「代謝産物は体内の代謝機構の中間体であり、運動に応じて代謝上の健康状態がどのように変化しているかを示すことができます」とオサリバン准教授は説明する。
准教授らは、52人の兵士を対象に80日間に渡る有酸素運動と筋力運動プログラムを行い、その前後にの血中の約200種類の代謝物を測定し、これらと心肺機能の変化との関連を調べた。
その結果、先行研究と比較して、多くの代謝産物に劇的な変化が発見された。鍛え上げられたエネルギー効率の高い筋肉は、これまでに示されていたよりもはるかに多くの燃料(脂肪など)を利用していることがわかった。研究者たちはまた、これまで目に見えなかった規模と範囲の観点から、腸由来の因子のレベルの変化、血液凝固に関与する因子、たんぱく質の分解産物、および血管を開いて血流を増加させることに関与する因子の変化も見出した。
運動による、これらの代謝効果がみられなかった対象者は、DMGVと呼ばれる代謝産物のレベルが高いことがわかった。最近の研究でも、この代謝産物のレベルが運動の恩恵を受けなかった人と関連することが示されている。そのため、今回の結果は興味深いとオサリバン准教授は述べている。「DMGVレベルは遺伝と食習慣に影響され、砂糖入り飲料で上昇し、野菜と食物繊維で低下します。DMGVを測定すると、心血管リスクを減らすために、運動以外の方法が必要な人々を特定できるかもしれません」
出典は『循環器研究』。 (論文要旨)
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