2020.4.3
, EurekAlert より:
人工甘味料そのものは「悪者」ではないものの、炭水化物とともに摂取されたときに人体に有害な変化が生じる可能性が示された。これまで、人工甘味料が人体に及ぼす影響についての研究結果が一致していなかった理由を解明する手がかりになるかもしれない。米国イエール大学の研究。
近年、人工甘味料による脳、そして最終的に新陳代謝に及ぼす影響について、盛んに議論がなされている。血糖値とインスリン値に悪影響が見られたとの研究が一部にあるものの、他の研究ではそのような結果には至らなかった。イエール大学教授であり、同大学・現代食と生理学の研究センターのスモール所長によると、これらの研究結果が一致しないのは、甘味料がどのように摂取されるか、より具体的には「何と一緒に摂取されるか」が原因の可能性があるという。
教授らは、人工甘味料のスクラロース自体には悪影響がないように思われるが、炭水化物とともに摂取されると、インスリン感受性に有害な変化を引き起こすこと、そして甘味に対する脳の反応の低下がfMRIで観察された、と報告している。
所長らがこの研究に着手した第一の目的は、人工甘味料の度重なる摂取が甘味の予測能力の低下につながるかを確かめることだったという。人工甘味料による甘味の知覚は、グルコースや炭水化物を代謝するために、体を準備する代謝反応を調節する能力を失う可能性があるため、このことは重要だという。
今回の実験で対象としたのは、低カロリーの甘味料を摂取する習慣がなく、かつ普通体重で代謝機能障害のない20〜45歳の45人。研究期間の2週間は、実験用の飲料を7回飲んでもらう以外には、食事やその他の生活習慣は変えないようにしてもらった。なお期間中、および前後にfMRIを用いて、対象者の甘味や塩味や酸味、その他の味に対する脳の反応の変化を調べた。また、味覚を測定したり、インスリン感受性を調べるために経口ブドウ糖負荷試験を行った。
対象者は3群に分けられ、次のいずれかで甘味付けをしたフルーツ風味の実験用飲料を摂取してもらった。()内は対象飲料のエネルギー。
@スクラロース(0kcal) A砂糖(120kcal) Bスクラロース+マルトデキストリン(120kcal)
スクラロースは砂糖の600倍ほどの甘味を持つノンカロリー甘味料。そしてマルトデキストリンは炭水化物の一種であるが、甘味はあまりない。そのため今回は、砂糖入り飲料と同等のエネルギー・甘味を持つスクラロース入り飲料を作成するために、マルトデキストリンを用いた。
実験の結果、驚くべきことに、甘味への脳の反応、インスリン感受性、糖代謝に変化が生じたのはBのスクラロース+マルトデキストリン群だった。この結果を踏まえて、さらに対象者を追加し、マルトデキストリンのみを入れた飲料を飲んでもらった。しかしインスリン感受性と糖代謝に変化はみられなかったという。
「おそらくこの影響は、腸がその時のカロリーの量について脳に送信するために作ったメッセージが不正確なことに起因しています」とスモール所長は述べている。「腸はスクラロースとマルトデキストリンに敏感で『実際の2倍のカロリーが得られる』と通知してしまいます。そのうち、これらの誤ったメッセージは、脳と身体が甘味に反応する方法を変えることによって悪影響をもたらす可能性があります」。
人工甘味料に関するこれまでの知見に矛盾があるのは、こういったことが理由かもしれない。
スモール所長によると、彼女のチームは青少年を対象に同様の研究を始めたが、スクラロースと炭水化物の組み合わせを摂取させた群の2人に、空腹時インスリンの急増が見られたため、実験を中断したという。
今後の研究では、他の人工甘味料やステビアのようなより自然な甘味料がスクラロースと同じ影響を持っているかどうかを調べたいとしている。スモール教授は、確実なことは言えないとはしながらも、他の人工甘味料でもスクラロースと同様の結果になるのではないかと予想しているとのことだ。
出典は『細胞代謝作用』。 (論文要旨)
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