2020.4.3
, EurekAlert より:
世界で初めて、原子レベルの解像度で神経アミロイドたんぱく質の構造を記述した、という米国ストワース医学研究所の研究報告。『サイエンス』誌に報告された。
このアミロイドは、ショウジョウバエにおいて、自己凝集したOrb2で構成されており、これが長期記憶保存と関連している。
「アミロイドは、たんぱく質が何らかの理由で悪化したり、誤って折り畳まれたりすることで発生すると考えられていたが、我々は、アミロイドが非常に特定の時間に、非常に特定の細胞で、非常に特定の方法で形成されることを発見した」と研究者は述べている。
アミロイドは通常、関連する神経毒性または変性状態の文脈で理解されている。アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、およびクロイツフェルト・ヤコブ病の場合、このたんぱく質は異常な形で凝集し、神経系に大混乱をもたらす安定した不溶性の沈着物を形成する。
しかし、2003年に研究チームは、ジャンボアメフラシ(Aplysia californica)で mRNA結合細胞質ポリアデニル化要素結合(CPEB)を研究している間に、神経系に適応機能を持つアミロイドがあることを発見した。マウスとショウジョウバエを用いたその後の研究を通じて、研究チームは、実際に、CPEBとそのショウジョウバエ版であるOrb2たんぱく質の自己凝集体(アミロイド)の固有の属性がシナプスでの適切な機能に不可欠であることを示した。
これらの研究は、CPEB / Orb2が脳内の異なる機能的および構造的状態で存在することを示唆している。主要な形態は、シナプスでの翻訳を抑制するモノマーだが、記憶が形成されると、これらのモノマーはシナプス翻訳を促進する生化学的に活性な凝集体に自己集合する。この移行は、記憶の永続化に必要だという。
今回研究チームは、Orb2の構造的特徴を明らかにしようとした。
組み換えOrb2は、生化学的に活性ではないため、研究チームは、300万匹のショウジョウバエ頭部から内因性のOrb2を精製して使用した。このOrb2は生化学的に活性であり、自己凝集してフィラメントを形成した。
研究チームは、低温電子顕微鏡と97%以上の純度を持つ標品を用いることで、この内因性ショウジョウバエOrb2の構造を2.6オングストロームの解像度で解析することができたという。
内因性Orb2は約75nmの長さの3回対称のアミロイドフィラメントを形成していることが明らかになった。Orb2がクロスベータアミロイド構造で凝集し、31アミノ酸で構成されるプロトフィラメントコアのヘアピン様の折り畳みが親水性界面を介してパックされることを確認したという。
研究チームは、ヒトとマウスを用いた検討を開始しているという。4つのCPEBイソフォームが存在し、マウスとヒトはそのいくつかのバリアントを持っている。マウスの特定のアイソフォームも記憶強化に重要であり、これらは対応するヒトのイソフォームとたんぱく質配列がほぼ同一であるという。
出典は『サイエンス』。 (論文要旨)
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