2020.3.25
, EurekAlert より:
先進国の多くの健康問題は、肝臓におけるグルコース生産とエネルギー利用性の微妙な代謝バランスの乱れに起因していると考えられるという。米国イェール大学の研究チームは、代謝的不均衡をもたらす二つの独立した、けれども互いにリンクしたプロセスの分子メカニズムを発見した、と『ネイチャー』誌に報告した。
膵臓から分泌されるホルモンのひとつグルカゴンは、食糧が不足したときに、糖新生と呼ばれるプロセスによって肝臓のグルコース生産を刺激する。糖尿病では、このプロセスが乱れている。
ジェラルド・シュルマンら研究チームは、肝臓におけるグルコース生産とエネルギー消費の間の代謝的バランスをグルカゴンがどうやって維持しているか発見したという。
研究は、ミトコンドリア内でのカルシウムシグナル伝達の役割に焦点が当てられた。
研究チームは、イノシトール3リン酸受容体1(INSP3R1)と呼ばれるたんぱく質が、グルカゴンに応答して肝臓の糖新生と脂質酸化の両方を調節することを発見した。INSP3R1は、細胞内のカルシウムシグナル伝達を制御することによって糖新生に影響し、ミトコンドリア内のカルシウムシグナル伝達に影響することによって脂質酸化に影響することを発見した。
「我々は、肝臓においてミトコンドリアの脂質酸化を促進するというグルカゴンの良い効果を促進するための潜在的な治療標的としてミトコンドリアのカルシウム輸送を同定した。糖新生を刺激する悪い効果無しに、非アルコール性脂肪肝を逆転できるかもしれない」と筆頭研究者のレイチェル・ペリーは語っている。
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
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