2020.3.12
, EurekAlert より: 
40代後半と言う予想されるよりもかなり若い時期から加齢に伴う神経学的変化が見られることが、ニューロイメージングを用いた米国ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校からの研究報告で明らかになった。単純糖質の摂取を最小にすることでこの過程を予防・逆転できるかもしれないという。
脳の加齢に対する食事の影響をよりよく理解するために、研究チームは、加齢の影響ははっきり出始める前の予防が最も効果的と思われる時期に焦点を当てた。大規模生涯ニューロイメージデータセットを用いて、脳の各領域間の機能的通信が加齢によって、早くも40代後半に不安定化し、それは認知機能の低下とインスリン抵抗性を加速させることを示した。
次に、より目的を絞り込んだ実験によって、脳の加齢に関するこのバイオマーカーが異なるエネルギー源の摂取によって変化することが示された。グルコースは脳のネットワークの安定性を低下させ、ケトンはそれを上昇させた。
研究チームは、18-88歳の1,000人近い対象者を含む2つの大規模脳ニューロイメージング(fMRI)データセットを用いて、脳ネットワークの安定性を加齢のバイオマーカーとして確立した。さらに、50歳未満の42人を対象に、脳に及ぼすグルコースとケトンの影響を直接観察した。
参加者は、標準的な食事と、低糖質食(糖類やでんぷんの少ない食事)で1週間過ごした後、脳ネットワークの安定性を測定された。標準食ではエネルギー源はグルコースだが、低糖質食ではエネルギーは主としてケトンになる。
だが、二つの食事の違いはそれだけとは言えないため、研究チームではより直接的にグルコースとケトンを直接摂取してその影響を観察し、食事と同様の効果が観察されることを確認した。
結果をまとめると、脳の加齢の影響は、47歳ですでに現れ、60歳で最も急速な変性が観察された。50歳未満でも、食事性ケトーシスが脳の全体的な活動を増加させ、機能的ネットワークを安定化させたという。
「今回の結果は、良いニュースと悪いニュースの両方を含んでいる」と筆頭研究者のリリアン・ムジカ=パロディ教授は述べている。「悪いニュースは、以前思われていたよりもはるかに早く脳の老化の最初の兆候が見られることだ。良いニュースは、グルコースをケトンに交換することにより代謝低下の影響を軽減し、加齢の影響を防止または逆転できる可能性があることだ。」
出典は『国立科学アカデミー論文集』。 (論文要旨)
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