2019.12.24
, EurekAlert より:
がん患者は、健常者よりも脳卒中による死亡リスクが2倍高く、特定のがんではさらに死亡リスクが高かったという、米国ペンシルベニア州立大学医学部からの報告。
米国の主な死因はがんであり、脳卒中は5番目である。脳卒中予防のためのガイドラインはあるが、がん患者のための脳卒中予防のガイドラインはほとんどない。
「これまでの研究では、がん患者の多くが、がんではなく、他の疾患で亡くなることが明らかになっている。脳卒中も死亡リスクの1つである。私たちの結果は、脳卒中による死亡を防ぐためのスクリーニングプログラムを行うことで、がん患者が利益を得られる可能性を示唆している。同様に、これらのリスクのある患者を特定することに役立てることができる」と筆頭著者のニコラス・ザオルスキー助教授は述べている。
研究では、国立がん研究所の調査(SEER)データを用いた。データには、がんの発症率、生存率、治療、診断と年齢に関するデータが含まれており、米国の人口の約28%を網羅している。1992年から2015年にかけて浸潤性がんと診断された720万人以上のデータを用いた。
がんを発症した752万9481人のうち、8万513人が脳卒中で亡くなった。脳卒中による死亡率は、男女とも同様であった。脳卒中死亡のリスクは、若い年齢でがんと診断された人で高かった。
さらに、がんに罹り、脳卒中で死亡した人について、40歳未満では、ほとんどが脳腫瘍とリンパ腫の治療を受けた人であった。40歳以上では、前立腺がん、乳がん、大腸がんとの関連が強かった。
「脳卒中を発症するリスクとして、がん患者では、血栓が形成されやすいことを挙げている。血栓が肺に送られると肺閉塞症、脳では脳卒中を引き起こす。一般的に、血栓はがん患者がもつ危険要因である」とザオルスキー助教授はべている。
主任著者で脳神経外科のブラッド・ザカリア助教授は、がん患者が脳卒中のリスクのある化学療法や放射線治療を受けている可能性を疑っている。今後の研究によりメカニズムを特定することが、がんと脳卒中との関連を確立するために有効であるかもしれないとまとめている。
出典は『ネイチャーコミュニケーション』。 (論文要旨)
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