2019.12.12
, EurekAlert より:
健康的なイメージで近年、もてはやされてきた高たんぱく質食だが、人によっては重大な健康リスクになりえるという。特に、慢性腎臓病のリスクが高い人(糖尿病患者、肥満者、腎臓がひとつだけの人、そしておそらくは高齢者も)では注意が必要とのことだ。『腎臓病学透析移植』誌の論説。
一般に高たんぱく質食は健康的だと考えられている。それはつまり、体調をキープし、脂肪を減らし、筋肉量を維持するのに役立つということだ。炭水化物を控えたんぱく質に置き換えることは、外見と健康に気を遣うすべての人にとって主な定説とされてきた。
米国カリフォルニア大学のカランタール-ザデー氏らは、この説に疑問を呈し、現代の食習慣に警鐘を鳴らすことが必要であるとする。「カロリーを減らせるものの、腎臓にとっては健康リスクとなるかもしれません」
高たんぱく質食はカロリーを控えることで、体重を減らすことが期待されることから、糖尿病に苦しむ人や肥満の人に対し非常によく勧められている。しかし、この推奨の急所は、こういった人たちは、高たんぱく質摂取による腎臓損傷の影響に対して特に弱いということだ。
「高たんぱく食は腎糸球体の過剰濾過を誘発します。このことは現在の知見によれば、糖尿病患者さんによくみられるような軽度慢性腎臓病の進行を加速させる可能性があります。また腎臓病の新規発症リスクを高める可能性すらあるのです」共同研究者であり、欧州腎栄養ワーキンググループの前会長であるフーク教授は説明する。「簡単に言うと、高たんぱく食を過体重の糖尿病患者に勧めると実際に体重が減少するものの、腎機能が大幅に低下してしまう可能性があります」。
2型糖尿病患者数の増加、そして糖尿病患者のうち少なくとも30%が慢性腎疾患に罹患しているという事実を考慮して、専門家は糖尿病患者および一般の人々に警告する時が来たとしている。「皆さん、特に慢性腎臓病のリスクが高い人々−具体的には糖尿病患者、肥満者、腎臓がひとつだけの人、そしておそらくは高齢者も−に助言します。たんぱく質の豊富な食事を食べることは、腎臓の健康に対し死の鐘を鳴らすようなものであり、腎臓移植へと大きく一歩近づけてしまいます」とフーク教授。
これが、この論説の主要な点である。さらにこの中で2つの新しい研究も紹介されている。オランダのコホートでは、毎日のたんぱく質摂取量と腎機能の低下との間に厳密な線形関係が示された。摂取量が多いほど、機能低下は加速する。韓国で行われた疫学研究の結果でも、同様の傾向が示された。たんぱく質摂取量が最も多い人は、糸球体濾過量(GFR)損失がより速くなるリスクが1.3倍であった。
この発見自体は目新しいものではない。多くの先行研究から、高たんぱく質食が腎機能に悪影響を与える可能性があることが示されているのだ。そのため、腎臓病専門医は、既知の初期慢性腎疾患の患者に低たんぱく食を勧めている。たんぱく質が動物性であるか植物性であるかによって違いが生じるかどうかは未だはっきりとしていないため、推奨できることとしては、一般的に、たんぱく質の摂取量を控えることだ。
しかし、フーク氏らが指摘しているように、問題は、軽度の慢性腎臓病であるにも関わらず、高たんぱく質食が健康的だと信じ込んで摂取してしまうような人々だ。「これらの人々は、後戻りできない『腎不全への高速レーン』に乗っていることに気づいていません」。
フーク教授らは、啓発活動を開始し、この問題に対する一般の人々の認識を高めたいと考えている。「高たんぱく質食には別の側面があることを皆さんが知ることが不可欠であり、食習慣を変えて高たんぱく質食を採用する前に、初期の腎疾患は必ず除外するべきです」。
出典は『腎臓病学透析移植』。 (論文要旨)
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