2019.11.7
, EurekAlert より: 
腸内細菌と脳細胞の間のコミュニケーションの根底にある新しい細胞分子プロセスを発見した、という米国ワイルコーネル医科大学からの研究報告。
炎症性腸疾患(IBD)やその他消化器系の慢性症状が、精神や行動にどのように影響するかはまだほとんどわかっていない。研究チームはその全体像を理解する新たな方法を開発したのだという。
研究チームは、マウスモデルを用い、腸内細菌叢が完全に除去されたマウスの脳細胞に生じる変化を検討した。
抗生物質によって細菌数を減少させた、あるいは無菌的に飼育されたマウスは、脅威が去ってもそれを学習する能力が有意に低下した。その分子メカニズムを明らかにするために、脳のミクログリアという免疫細胞中のRNA配列を調べたところ、学習プロセス中に脳細胞の結合を変化させる役割をもつ遺伝子発現を変化させることを発見した。健康なマウスのミクログリアにはこのような変化はみられなかったという。
研究チームはまた、無菌マウスの脳内の化学変化を調べ、統合失調症や自閉症などヒトの神経精神障害に関連するいくつかの代謝産物の濃度が変化していることを発見した。
次に、研究チームは、出生時から種々の年齢で腸内細菌叢を回復させることにより、マウスの学習能力を正常化させようとした。その結果、誕生直後に腸内細菌叢を回復させた時だけ、学習能力が正常化されることがわかった。
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
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