2019.10.9
, EurekAlert より:
何百万もの人々が、家の近くで獲れる栄養豊富な魚介類の存在にも関わらず、栄養不良に陥っている、という英国ランカスター大学からの研究報告。
魚介類の栄養として有名なのはオメガ-3系脂肪酸だが、他にも鉄、亜鉛、カルシウムなどの重要な微量栄養素が豊富に含まれている。20億を超える人々が微量栄養素欠乏に苦しんでいるといわれており、それは母体死亡、発育不全、子癇前症などに関連している。アフリカのいくつかの国ではそのような欠乏のためにGDPが最大11%低下していると見積もられている。
本研究は、栄養不良を大きく低下させるために充分な量の栄養が既に海洋から漁獲されていることを示唆するものであるという。そして、食糧生産の問題について慎重に考えるよう求められる現在において、より多くの漁業はその答えではないかもしれないという。
主任研究者のクリスティーナ・ヒックス教授は述べている。「世界人口のほぼ半数が海岸から100km以内に住んでいる。漁獲は沿岸地域の5歳未満の児童のすべての必要量よりも多い。これらの漁獲物が地元で容易に入手できれば、何百万もの栄養不良関連疾患と闘うことができる。」
研究チームは、350種類を超える海産魚の7種類の栄養素含量に関するデータを収集し、魚のエサ、海水温、エネルギー消費などを元に特定の魚からどれだけの栄養が摂れるかを予測する統計モデルを開発した。
この予測モデルは、これまでまったく栄養成分を分析されたことがない何千という種類の魚の栄養組成を正確に予測することができるという。
現在の水揚げ量のデータを用いて、研究チームはこのモデルから既存の海洋漁業によって得られている栄養の量を計算した。そして、世界中の栄養欠乏の推定値と比較検討した。
その結果、重要な栄養素は、すでに水揚げされている魚から容易に得ることが可能であるものの、それが多くの沿岸住民には届いていないことが明らかになったという。
例えば、アフリカ西海岸での現在の漁獲量は、沿岸から100km以内に住む人口の亜鉛、鉄、ビタミンA欠乏を補うのに充分な量であった。
研究者によれば、国際漁業、違法な漁業、魚介類貿易、文化的慣習、規範が絡み合った複雑な状況が、栄養不良の人々と彼らの玄関先で獲られた充分以上の魚の栄養との間に存在するという。
「多くの人にとって、魚はたんぱく質と考えられているが、実際には多くのビタミン、ミネラル、脂肪酸の重要な供給源である」と共同研究者でジョンズホプキンズ大学のアンドリュー・ソーン=ライマン博士は語っている。
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
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