2019.10.8
, EurekAlert より:
果実を食べるサルは醗酵した果実に含まれるアルコールを好むが、それは補足のカロリー源としてではないようだ、というスウェーデン・リンショーピング大学とメキシコ・ベラクルサナ大学からの研究報告。
熟し過ぎた果実が微生物によって醗酵するとき、アルコールが生成する。いくつかの研究で、果実を食べるサルがこの食事性のエタノールを補足のカロリー源とすることが示唆されている。研究チームはこれを検証するために今回の研究を実施したという。
メキシコで実施された最初の実験では、研究チームは、8頭のクモザルに水道水および醗酵果実に含まれる天然のエタノールを0.5-3%の濃度で与えた。すると、サルたちは0.5%でもエタノールを感知することができたという。ヒトの場合では、1.34%ていどが検出限界である。サルたちはすべての濃度のエタノールを水よりも好んで飲んだという。
「この結果が実証しているのは、果実を食べるクモザルは驚くほどエタノールに対する感受性が高いということだ。そして、彼らがこのアルコールを好むということである」と主任研究者のマチアス・ラスカ教授は語っている。
二つ目の実験では、クモザルがエタノール入り砂糖溶液とエタノールなしの砂糖溶液のどちらを選ぶかをテストした。明らかに、サルたちはエタノール入りのほうを好んで選択した。けれども、エタノール入りの砂糖溶液と、エタノールなしの高濃度の砂糖溶液を与えると、サルたちは明らかに純粋な砂糖溶液のほうを好んで選択し、それはエタノール入りの溶液のほうが3倍のカロリーを含んでいても変わらなかったという。
同様の実験では、クモザルにエタノール入りの果実ピューレとエタノールなしの果実ピューレを選ばせた。どちらの実験においても、クモザルにとっては、エタノールが供給するカロリーよりも全体の糖含量がより重要だということが示唆された。
「この知見は、したがって、果実を食べるサルが食事性のエタノールを補足のカロリー源として用いるというアイデアを支持しない。同様に、この知見は、類人猿がアルコールを含む熟し過ぎた果実を好んだことがヒトのアルコール中毒の起源であるというアイデアも支持しない」と教授はコメントしている。
出典は『化学的感覚』。 (論文要旨)
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