2019.9.26
, EurekAlert より:
世界中で、医学教育における栄養教育が足りておらず、医学生は患者に適切な栄養ケアを施すだけの知識もスキルも持っていないようだ、という豪州グリフィス大学からの研究報告。
著者らは、すべての医学生に栄養教育を義務化すべきであると主張している。
世界中で、毎年1,100万の死亡が貧しい食生活によって起きていると考えられている。多くの国で医師は栄養の知識を用いて生活習慣病やその他食事に関連した疾患の患者をサポートすべきであると思われているが、調査によればどの国の医学教育においても栄養学はまったく重視されていないようだ。
著者のローレン・ボール博士は、「健康的な生活習慣における栄養の重要性にも関わらず、医学生は、効果的に患者の栄養ケアをほどこすために必要な栄養学の知識を教えられていない。医学生のための栄養教育は改善されなければならない」という。
著者らは、医学生に対する栄養教育全般を調査するために、最近の卒業生または現役医学生の栄養知識を調査した研究をレビューした。2012年から2018年にかけて24件の研究が見つかった。うち16件は量的研究であり、3件は質的研究、5件はカリキュラムの提案だった。国別にみると、米国11件、欧州4件、中東1件、アフリカ1件、豪州7件だった。方法論的なクオリティは「極めて低い」から「高い」まであった。レビューの採択基準を満たすアジアからの研究はなかった。
レビューした研究すべてにおいて一貫して、医学生が栄養教育を欲しているが、そのための支援を受けていないことがわかったという。医学部における栄養教育は質が低く、カリキュラムにおける優先順位が低く、教員は栄養に興味も専門知識も持っておらず、臨床実習においても栄養カウンセリングの実習はわずかで参考にならないからだ、というのがその理由であるという。
さらに、医学生は一貫して要求する栄養知識の欠如を報告している。それは試験を通じても明らかになっている。たとえば、ある研究では、試験で栄養知識を評価した時、医学生の半数しか合格点を取れなかった。
カリキュラムを提案した5件の研究では、わずかにポジティブの効果があることがわかったが、大部分の研究が、持続的に医学教育に組み込むものというよりは、一回限りの特別講義のようなものを採用していた。オンラインカリキュラムや調理体験、栄養士のような他の専門家からの学習機会のような革新的な試みは、患者や医療システムに短期および長期の利益があることが示されたものの、著者らは革新的な試みの開発・改良にはさらなる予算が必要だとした。
著者らは、現在の不十分な栄養教育は、予防的ケアだけでなく、医師らの患者に対する標準治療に影響している可能性が高いという。したがって、著者らは医学教育に栄養教育を組み込むことの重要性を強調する。
出典は『ランセット惑星保健』。 (論文要旨)
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