2019.9.19
, EurekAlert より:
脳の空腹ホルモン・グレリンへの抵抗性が、アルツハイマー病に関連した認知機能障害と記憶損失にリンクしているようだ、という米国テキサス大学ダラス校からの研究報告。
この知見は、アルツハイマー病患者の死後脳組織検体の観察とアルツハイマーモデルマウスにおける実験から得られたものである。
「これは概念実証研究だが、我々は結果にとても励まされた」と責任研究者のへング・ドゥ准教授は語っている。
胃で生産され、脳に送られるグレリンは、エネルギーバランスと体重を制御している。それはしばしば空腹ホルモンと呼ばれ、食欲と摂食の開始において役割を担っているが、グレリンはまた学習と記憶にも関与している。
脳の学習、記憶、情動を司る海馬領域は、アルツハイマー病でアミロイドβと呼ばれるたんぱく質の断片が蓄積して最初に損傷を受ける領域のひとつである。
健康な海馬では、グレリンはグレリン受容体たんぱく質に結合して活性化する。それは同様に活性化されたドパミン受容体と結合し、二つの受容体はたんぱく質複合体を形成して脳の細胞間のコミュニケーション(ひいては記憶)を維持するのを助けている。
研究チームは、アミロイドβが海馬のグレリン受容体に結合して、ドパミン受容体を活性化するのをブロックすることを発見した。
この発見は、MK0677と呼ばれる脳のグレリン受容体を活性化する化合物の最近の臨床試験がアルツハイマー病の進行を遅らせることができないことを説明する役に立つという。
研究チームは、モデルマウスに、MK0677と別の化合物(ドパミン受容体を活性化するSKF81297)を同時に投与した。すると、マウスの認知機能と記憶が改善し、海馬の病変が減少したことがわかったという。研究チームによれば、両方の受容体を同時に活性化することが重要であり、複合体を形成する受容体の能力が回復されたという。
出典は『サイエンストランスレーショナル医療』。 (論文要旨)
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