2019.8.9
, EurekAlert より:
筋トレを行うと筋肉が脳由来神経栄養因子(BDNF)を生成し、筋肉とシナプスの両方に作用して、筋繊維と運動神経線維との接合部を改造することが実証された。また、BDNFの働きによって遅筋が速筋に再構築されるため、筋力がアップする一方で筋持久力は低下してしまう可能性も明らかに。スイス・ バーゼル大学バイオセンターの動物実験から。
<BDNFは筋肉やシナプスに作用>
一般的に筋肉は、構成する繊維の種類に応じて2種に分類される。筋肉の持久力に関係する「遅筋」と、大きな筋力を発揮する「速筋」だ。
ハンチン教授らの研究チームは、マイオカイン・グループのホルモン様神経伝達物質についてマウスを用いた調査を行った。マイオカインは収縮中に筋肉から放出される。「BDNFが筋肉そのものによって生成され、筋肉に影響を与えるだけでないのは興味深いことです。それは運動神経線維と筋繊維が接合する神経筋接合部にも影響を与えるのです」と教授は説明している。
<BDNFは遅筋を速筋に変える>
筋力トレーニング中の神経筋接合部のこの再構築は、速筋繊維を発達させる。「しかし、速筋の成長は遅筋線維を犠牲にして生じます。より正確には、BDNFの放出によって、遅筋は速筋に変換されるのです」とハンチン教授は明確に述べている。これにより、BDNFは筋肉そのものから生みだされ、そして形成される筋線維の種類に影響を与える要因になることが証明された。
<筋トレ・サルコペニアとの関連性>
BDNFについて得られた新しい知見はまた、筋トレに励んだ結果、遅筋組織が減少するのはなぜかという問いへの答えを持つ可能性がある。この相関関係はすでに高パフォーマンスのスポーツのトレーニング計画で考慮されている。特に筋力と持久力の両方を要するボート競技などのスポーツ分野では、筋肉の再構築に関して熟考が必要だ。
さらなる調査で研究グループは、BDNFの不足した筋肉では、筋肉量と機能の加齢に伴う減少が緩和されることを示した。「この結果は予想外でした」とハンチン教授。「高齢者の筋萎縮の治療という観点からも、この発見は興味深いものとなっています」。
出典は『国立科学アカデミー論文集』。 (論文要旨)
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