2019.7.25
, EurekAlert より:
深い眠りは記憶の強化に重要だが、軽度認知障害(MCI)の人は深く眠る時間が短い傾向が示されている。米国ノースウエスタン大学の予備的研究により、特定のノイズを聴きながら眠ることで軽度認知障害の人も深い睡眠が得られ、記憶反応も良くなる様子がみられたという。
【本研究のポイント】 ・軽度認知障害(MCI)はアルツハイマーの前兆となることが多い ・深い眠りの強化がなされるほど、記憶応答は良くなる ・深い眠りの改善は、MCIの人々にとって実行可能な治療法になるであろう ・この技術は潜在的な対処法として家庭で行うのにふさわしい ・深い眠りは記憶の強化に極めて重要である
--- MCIの人の睡眠中の脳波を測定し、深い眠りに入っている間に穏やかな音の刺激をすることで、徐派睡眠(深い睡眠の段階)を強化したほか、脳がその音に最も強く反応した人では、翌日の記憶応答が改善していたという。
「私たちの発見は徐派睡眠、つまり深い眠りがMCIの人に対する実行可能で重要性を秘めた治療ターゲットであることを示唆しています。この結果は、記憶とその損失における睡眠の重要性についての理解を深めてくれました」とマルカニ准教授は述べている。
深い眠りは記憶の強化に極めて重要であるが、MCIの人においてはいくつもの睡眠障害がみられる。中でも最も明白な変化は、深い睡眠の段階にいる時間が減少することだ。
「MCIやアルツハイマー患者のための治療ターゲットを特定することには、切実な求めがあります」と准教授。同大学の研究者らは、2017年の先行研究において特定の音が高齢者の記憶を改善することを示している。
今回の研究は、被験者が9名という小規模なものであったため、数人の被験者は反応が大きかったものの、記憶改善効果に統計学的な有意差を認めることはできなかった。しかしながら、音による深い睡眠の強化と記憶は有意に関連することが明らかになった。深い睡眠の強化の程度が大きいほど記憶応答が良くなっていたのだという。
ちなみに、実験に用いられた音は「ピンクノイズ」とよばれる、雨音にも似た音。周波数に反比例し、高い周波数の音ほど小さくなる、いわゆる「1/fゆらぎ」を持った音である。
マルカニ准教授は「これらの結果は、睡眠を改善することが認知症を食い止めるための有望な新しいアプローチであることを示唆しています」としている。
出典は『臨床トランスレーショナル神経学年報』。 (論文要旨)
|