2019.4.24
, EurekAlert より:
ゲーム理論を応用して、なんの合理的根拠もない迷信がある集団内に定着する過程がモデル化された。米国ペンシルバニア大学からの研究報告。
古代ローマ人の指導者らは、選挙の日や、どこに新都市を建設するか、といった重要なイベントを決定するのに、鳥の存在や飛翔パターンに基づいて決めたという。現代の米国でも、建築業者はしばしば13階をフロアプランから省いてしまうし、多くの歩行者が梯子の下を避けて通るために歩道をはみ出して通行する。
このようなことは迷信に過ぎず合理的ではないということは広く認識されているにも関わらず、今でも多くの人が行動指針のひとつにしている。
今回の研究では、二人の理論生物学者が、ゲーム理論を応用した新しい分析において、どのように社会規範の中に迷信的な信条が確立されるかを示すモデルを提案している。この研究は、それぞれが異なる信条システムから出発した個人から成る集団が、どのように首尾一貫した社会規範のセットによって強化された行動のコーディネイトされたセットに進化するかを示している。
「我々が示したのは、誰も特別な信条システムを持たないシステムでの始まりにおいて、信条セットが現れてきて、そこからコーディネイトされた行動のセットになる、ということだ」と主任研究者のエロール・アクチャイ助教授は語っている。
「ゆっくりと、これらのアクターは迷信を蓄積していく」と共同研究者のブライス・モルスキー博士は付け加えている。「彼らはいうだろう、『OK、私は信じる、私がこの出来事を観察したとき、私はこのように振舞うということを。なぜなら他の人もそのように振舞うだろうから。』時が過ぎて、もしその戦略が成功すると、迷信が信じられ、次第に定着していく。」
本研究はゲーム理論を応用している。ゲーム理論は、いかに人々が社会状況の中で相互作用し決断するかを予測する。研究チームは特に相関均衡として知られるものを考慮した。相関均衡は、全てのアクターが応答しなければならない相関シグナルを与えられるシナリオである。
「古典的な例は信号機である」とアクチャイ助教授は言う。「二つの集団が交差点に差し掛かるとき、一方は赤信号で止まり、他方は青信号で進むことを全員が知っている。」
シグナル(この場合は信号機)は、相関器といわれるものであり、「振付師」のようなものである。けれども、研究チームは、振付師がない場合に何が起こるかを知ろうとした。人々が彼らの行動に直接影響する他の様々なシグナルに注意を払い、そして彼らの信条は彼らの行動の成功によって伝達されるとすると、コーディネイトされた行動が起きるだろうか? 別の言葉で言えば、ブラインドの振付師として行動は進化するだろうか?
「自転車乗りが交差点に進んでおり、信号機の代わりに猫が見えるとしよう」とアクチャイ助教授は言う。「その猫は交差点には無関係であるが、自転車乗りはその猫が黒猫であれば止まれの合図だと考えているとする。」
彼が猫の色で止まるかどうかを決めてもそこにはなんの意味もないが、時にそれが彼の利益になることがあると、それが他の自転車乗りに迷信として広まっていく。
「時には不合理な信条を抱くことが合理的である場合がある」とモルスキー博士は述べている。
彼らのモデルでは、二人は各人は完全に合理的であることを仮定している。規範に盲目的に従うのではなく、彼らの信条が有益であるように見える時だけ従う。彼らはその信条を、成功した人々の信条を模倣することによって変える。これが、規範がお互いにぶつかりあうとき進化的ダイナミクスを作り出し、グループを通じて優勢になったり劣勢になったりする。この進化的プロセスが新しい社会規範の形成につながるのである。
出典は『国立科学アカデミー論文集』。 (論文要旨)
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