2019.2.18
, EurekAlert より:
運動が誘導する筋肉の変化が高齢者の気分を押し上げる助けになるかもしれない、というカナダ・マクマスター大学からの研究報告。
運動は、遺伝子発現を制御する助けになるある種のたんぱく質(転写因子)の発現を高め、体内のトリプトファン代謝を促進する。トリプトファンは気分に関連する化学物質であるセロトニンの前駆体である。多くのうつ病患者で血中セロトニンの低下が観察されている。
トリプトファン代謝はキヌレニン代謝経路を通じて行われるが、それには二つの分枝が存在する。ひとつは神経保護的であり、別のひとつは神経障害的である。キヌレニン代謝経路の神経保護的分枝は、KATと呼ばれる酵素を必要とする。有酸素レジスタンス運動はKAT活性を高め、したがって、トリプトファン代謝の神経保護的分枝を促進することがわかっている。
若年成人を対象にした予備的研究において、運動に関連した筋肉の変化が運動の気分を押し上げる効果に重要であることが示唆されている。けれども、まだ分からない部分が多く、特に、高齢者のうつ病の治療法になる可能性があるかどうかはわかっていなかった。
研究チームは、うつ病歴のない65歳以上の健康な高齢者を対象に12週間の運動プログラムを実施した。それはレジスタンス運動(レッグ&ショルダープレス)とステーショナリーバイクによる高強度インターバル運動から構成されていた。
研究チームは、血液と筋肉の検体を採取して、運動前、運動期間中、運動後の遺伝子発現やたんぱく質合成の変化を分析した。
その結果、転写因子とKATの発現が運動期間中に有意に上昇したことが明らかになった。この結果は、若年成人を対象とした先行研究の結果と一致するものだった。
出典は『米国生理学雑誌-細胞生理学』。 (論文要旨)
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