2019.1.25
, EurekAlert より:
ヒト母乳中に含まれるオリゴ糖は長い間遺伝的に組成が決まると思われていたが、実際には女性が摂取したプロバイオティクスによって変わるようだ、という米国ロチェスター大学医療センターからの研究報告。
本研究は、『JAMA小児科学』最新号に発表されたもので、ヒト母乳オリゴ糖(HMO)というヒトの母乳にのみ含まれる糖分子に焦点を当てているが、今後食事や他の因子による影響の可能性が検討されることになるだろう。
HMOは、新生児には消化できない糖だが、腸内細菌のあるものはそれを消化するので、細菌叢の組成に影響が及び可能性がある。そのため、HMOを母乳哺育児にある種のウイルス感染や細菌感染が少ない理由あるいはアレルギー性疾患が少ない理由なのではないかと考えて興味をもつ研究者が増えている。
「HMOは、遺伝的に決定されると考えられていた。つまり血液型のように」と筆頭研究者のアンティ・セッポ研究准教授は語っている。「けれども、このデータは、あなたがHMOを外的な要因によって操作可能であることを示している。」
「我々は、HMOと腸内細菌の相互作用を一方通行的に考えてきた。HMOがプレバイオティクスとして働いて、腸内細菌のコミュニティを形作るというものだ」と共同研究者でカリフォルニア大学サンディエゴ校のラルス・ボーデ准教授は語っている。「今回、我々は初めて母性の食事由来の細菌が、プロバイオティクスの形で、母乳のHMOの組成を形作ることを示唆した。」
研究では、フィンランド在住でプロバイオティクス補給研究に参加した妊婦の81名を対象とした。研究チームは、プロバイオティクスを摂取した女性と摂取しなかった女性で、20種類のHMOを比較した。
今後の研究では、特定のプロバイオティクスと食品群が特殊なHMOと関連している可能性を検討する予定だという。それが明らかになれば、特定の疾患に対抗する最適HMOのカスタマイズといった臨床応用が可能になるだろう。
「HMOは、乳幼児の食物アレルギーの発症と関連しているので、HMOの組成を操作することができれば、新しい食物アレルギー予防法を確立できるかもしれない」と主任共同研究者のキルシ・ジャルビネン=セッポ博士はコメントしている。
出典は『JAMA小児科学』。 (論文要旨)
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