2018.8.13
, EurekAlert より: 
低炭水化物高脂肪の食事プランとして減量に有効であるといわれるケトジェニックダイエットは、食事の初期段階で2型糖尿病のリスクを高めるかもしれない、という研究報告。
2型糖尿病は、世界中で増加が懸念されている病気だが未だ完全に解明されているとは言い難い。ケトジェニックダイエットは、低炭水化物高脂肪を特徴とし、減量に有効であるといわれているが、今回の研究のように、健康への悪影響の懸念がしばしば報告されている。
インスリンは、血液中に放出され、肝臓に糖の生産を止める信号を送るなどの仕組みで血糖値を制御する。もしこのシステムに障害が起こり、インスリンに身体がうまく反応しなくなれば(インスリン抵抗性)、高血糖状態が続くようになる。
研究チームは、ケトジェニックダイエットにおいて、まさにこのシステムが障害され、肝臓におけるインスリン抵抗性が起きることを示した。肝臓が通常濃度のインスリンに反応しなくなると、血糖値が高まりそれは2型糖尿病のリスクを高めることになる。
スイス・チューリッヒ工科大学による本研究は、マウスに2種類の食事(ケトジェニックダイエットと通常の高脂肪食)を与え、肝臓にインスリン抵抗性が起きるかどうかを検討したものである。研究チームは、そのために特別なプロシジャ−を開発して、インスリンに反応して起きる肝臓の糖生産と筋肉の糖取込みを測定した。
ケトジェニック食群のマウスは一見健康な状態に見えたが、実際には高脂肪食群よりも、グルコース不耐性の発現が急激だったという。その原因は、グルコースの血中からの除去に障害が起きるためではなく、インスリンによる肝臓のグルコース生産の抑制が弱まる(インスリン抵抗性の発現)ためであると思われた。
重要なことは、本研究では食事が長期にわたった場合に肥満を起こすかどうかは調べていないことであるという。全体のプロセスの背後にあるメカニズムも分かっていない。したがって、両群のメカニズムの違いについては更なる研究が必要である。
「糖尿病は我々が直面する最大の健康問題のひとつである。ケトジェニックは健康的であると言われているが、我々は、このタイプの食事が2型糖尿病につながるインスリン抵抗性のリスクを高める可能性があることを示した」と主任研究者のクリスチャン・ウォルフルムはコメントしている。
出典は『生理学雑誌』。 (論文要旨)
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