2018.5.31
, EurekAlert より: 
徹夜して日中は寝ているという生活は、数日で100種以上のたんぱく質のレベルと時間ごとの発現パターンを混乱させる可能性があるという。これらのたんぱく質には、血糖値やエネルギー代謝、免疫機能に影響するものの含まれるとのこと。米国コロラド大学の研究。
この研究はヒトの血液中のたんぱく質レベル、いわゆる血漿プロテオームが24時間でどのように変化するか、そして睡眠と食事のタイミングがそれらにどう影響するかを調べた初めてのものだ。
さらに、食事と睡眠のタイミングに関係なく、体内の概日時間に応じて変化するたんぱく質を30種特定した。今回の結果は、糖尿病やがんのリスクが高く全労働人口の20%を占める夜勤労働者の治療のために、新しいドアを開くことになるかもしれないという。
デプナー氏らの研究チームは今回の実験で、20代の健康な男性6名を対象に、食事・睡眠・活動・露光量を厳密にコントロールした中で6日間過ごしてもらった。最初の1〜2日目には、通常のスケジュールとし、その後シミュレーションされた「夜勤パターン」(徹夜して夜間に食事をし、日中8時間の睡眠を取る)に段階的に移行した。そして被験者の血液を4時間ごとに採取し、最新技術によって1129種のたんぱく質発現の日内変動を評価した。
すると、夜勤パターンによってすぐに変化が生じるたんぱく質129種が明らかになった。この変化は、夜勤パターンへの移行開始から2日目にはもう起こっており、たんぱく質発現の日内変動は昼夜逆転していたという。
その中のたんぱく質のひとつ、グルカゴンは肝臓に作用して血糖を上昇させるホルモンだが、今回の実験では被験者が徹夜すると、通常とは逆で夜間にそのレベルが急増しただけでなく、ピークがより大きくなったという。長期に渡るこのパターンは、夜勤労働者の糖尿病罹患率の高さの説明になるかもしれない、とデプナー氏は話している。
また、夜勤パターンは繊維芽細胞成長因子19(FGF19)のレベルを低下させることもわかった。FGF19は、動物モデルでカロリー燃焼(エネルギー消費)の促進作用が示されている。今回の実験では、夜勤パターンによって被験者のエネルギー消費量が1分あたり10%低下することが発見された。ほかにも、明確に24時間のサイクルをもつ30のたんぱく質には、午後2時から9時の間にピークを迎えることも示された。
先行研究では、特定の臓器においてたんぱく質をコードする遺伝子発現の日内変動パターンが示されているが、血液中のたんぱく質を調査することによって、より広範囲かつ詳細に、何がおきているのかをリアルタイムで知ることができるだろう、とデプナー氏。
なお、今回の実験は被験者を薄暗い環境に置いて行ったため、概日システムに強く作用するとされる露光については結果に影響しないものとしている。夜間に電気光を煌々と浴びたわけではないのに、たんぱく質の変化は休息かる広範囲に及んでいたのだ。
共同研究者のライト氏は、「このことは、単純に夜間光の問題ではないことを示しています。誤った時間に食べたり起きていたりすることも、同様の影響を持つ可能性があるのです」としている。
出典は『国立科学アカデミー論文集』。 (論文要旨)
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