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論文紹介

祖父母と同居する子と一人っ子における過体重・肥満対策の重要性を指摘

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国際栄養情報センター生物統計研究室の池田奈由研究員(研究代表者)と西信雄センター長(研究分担者)は、国立社会保障・人口問題研究所の研究者の協力を得て、21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)のデータを解析し、祖父母と同居する子と一人っ子における過体重・肥満の傾向と年齢に伴う変化について検討しました。本研究成果は、科学雑誌「PLOS ONE」にオンライン掲載(4月17日付)されました。
本研究は、平成27〜28年度厚生労働科学研究費補助金(政策科学総合研究事業(統計情報総合研究))「21世紀出生児縦断調査等の高度利用による家庭環境等と子どもの健やかな成長との関連に関する学際的研究」の支援を受けて行なわれました。

【概要】

祖父母と同居する子や一人っ子といった家族構成が子どもの体格に与える影響は、子どもの成長とともに変化する可能性がある。そこで、研究者らは、厚生労働省が全国で実施している21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)のデータを用いて、祖父母と同居する子と一人っ子の幼児期から学童期に渡る過体重・肥満の傾向と年齢に伴う変化について検討した。

平成13年1月10〜17日及び7月10〜17日に日本で出生した全ての子を対象とする21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)の協力者47,015人のうち43,046人を分析対象とし、第3回調査(平成15年、2歳半)から第13回調査(平成25年、13歳)までのデータを用いた。回答者が報告した子の身長と体重の値からBMIを算出し、国際肥満タスクフォースによる基準値を用いて過体重・肥満を定義した。変量効果ロジットモデルを用いて、「同居する祖父母あり」と「同居するきょうだいなし」に対する各年齢時点での過体重・肥満のオッズ比を求めた。

その結果、祖父母と同居していることや同居するきょうだいがいないことにより、子が過体重・肥満である可能性が増加する可能性が示された。先行研究にも示されているように、祖父母と同居する集団ではスナック菓子の間食や砂糖入り飲料の摂取が比較的多かったり、一人っ子の集団では身体活動量が比較的低かったりといったことが背景として考えられる。さらに、年齢変化を見ると、祖父母と同居する子では過体重・肥満である可能性が就学前から増加していたが、一人っ子では学童期に入ってから増加していた。過体重・肥満への影響が現れる年齢的タイミングが異なる理由としては、祖父母との同居は分析期間を通じてほぼ変わらず、その体格への影響が比較的早い段階から現れる一方で、一人っ子は弟や妹の出生により年齢とともに減少し、学童期にはその状況がある程度固定化して一人っ子としての特徴が現れる可能性が考えられる。

今後、国や地方自治体における公衆衛生政策の立案・実施・評価に従事する専門家は、全国の祖父母と同居する子どもや一人っ子の生活実態についてより詳細に把握し、子どもの成長に伴う家族構成の変化を考慮した小児肥満対策を推進することが、将来の非感染性疾患予防のために重要であることが示された。

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2017年4月21日更新