痛風という病気

 痛風ってご存知ですか? 風があたると痛いから痛風と覚えていらっしゃる方もおられるかもしれませんが…

 痛風は、血中の尿酸が増えて起きる病気である。足の親指の付け根の関節に尿酸が溜まって、赤く腫れ上がって、靴が履けない程になって、激烈な痛みが起こる。痛風というのは風があたっても痛いから、と解説してあるものもあるがこれは間違い。漢和辞典を引くと、風は、例えば中風という言葉でも使われるように病気のことと分かる。つまり、痛い病気だから痛風。

 ところで、カラスやハトのふんがアスファルトに白くこびり付いて雨でも洗い流されないのを見かける。あの白いものが尿酸だ。尿酸は水に溶けにくい。その尿酸が血中で増えると体内のいろいろの場所に沈着する。特に足の親指の付け根の関節には溜まり易い。そこで、炎症が起こり、激烈な痛みを起こすことになる。さらに、最近では血中の尿酸値が上がる高尿酸血症は、血圧の上がる高血圧、コレステロールや中性脂肪の高くなる高脂血症と並んで、心臓を取り巻く血管が詰まって心臓の筋肉の一部が腐る心筋梗塞の危険因子の一つとされている。危険因子を持っているからと言って直ぐに病気になるわけではないが、なりやすくなる、つまり確率が高まるのだ。

 さて、尿酸は体内でできる老廃物だ。尿酸のもとになる物質は、もともと体内にもあるし、食事の中にもある核酸である。大量に核酸を含む食物としては、肉類、魚類、臓物などがあげられる。核酸は分解されて、最後は尿酸になる。尿酸は体内で一日約700mgが作られるが、一日ほぼ同じ量が尿に排泄され、体外に出る。だから、体内で尿酸が増えるのには、三つのタイプがある。作り過ぎる尿酸産生過剰型、尿の中に排泄する能力が低下する尿酸排泄低下型、その2つのタイプの混合型。今では、強力な血中尿酸値の低下作用をもついろいろの薬が開発された。尿酸排泄低下型には腎臓に働いて排泄を促進する尿酸排泄剤、産生過剰型には尿酸を作る酵素の働きを抑える尿酸生成阻害剤が用いられる。現在の痛風の治療は薬物が中心だ。わが国の痛風患者は50万人前後、排泄低下型が最も多く、60から70%とされている。

 痛風患者の90%以上は男性、特に中年以降の働き盛りの世代に多いということからそこに共通するライフスタイルが思い浮ぶ。過食や運動不足からくる肥満、大量飲酒などは特に尿酸値を上げる。痛風の食事療法として、有効な薬の出現するまでは肉類や臓物などに厳しい制限が指示された。しかし、尿酸は主に体内にある核酸から作られ、食事中の核酸から作られる量は通常一日200mg位なので、あまり厳密に食べるものを制限をしても意味がない。それよりは、薬を決められたとおりきちんと飲むことだ。

 また、痛風にとって特に大切なのは、肥満の解消であり、適正体重を維持することである。肥満は脂肪の蓄積である。臓器周辺の内臓脂肪の蓄積(肥満の項を参照)が特に血中の尿酸値の上昇と関係があることが分かっている。各栄養素のバランスのとれた、適切なエネルギー量の食事と適度の運動で減量を図れば尿酸値はかなり低下してくるのも事実だ。【岡 純】

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